幻。



私はずっと子供のままだった。

知識だけ、経験だけ、理想だけ、幻のように遠かった、もはや、知らなかった家族という、


夢を見ていた気がした。



長い長い解離。

徐々に現実を受けいれつつあり、夢と現実の区別がついてきたの?



あれから1人ずっと呆然としていた。



あの扉は、開けたらダメだって、

そしたら父の拳が目の前に来て、



そこから、ずっと夢を見ていたような感じ。


ただ父の何度も殴る痛みを感じなくなった頃に、

母が見て見ぬふりをしていた時に、



近所の人が道端で足を止め、いつも見ていた。




誰かに見られる屈辱とか、

それでも知らないふりを、知っていてもやめる事のない父を、



必死で受け止めた。




私にはやはりどうしても許せないと、なんとか、正当化していろいろな方法を試したけれど、



やはり2人とも許せないんだよ。



いつまで親のせいにしてるのって、

充分わかってる。



けいごくんの言葉は、私の言いたい事の代弁だったから、



何も言えなかった。



満天の星空の下で2人で見た景色は本物だ。


私は彼を愛してる?

本当に?



愛ってなに?


例えば今日彼が浮気して帰ってこなかったとしても、



皆が旦那さんが浮気したときのような、ショックを受けるのだろうか?



ただの行為、本能、



きっと私にはそういうふりしか、ショックを受けるふりしか出来ないんじゃないかって、



それより今夜1人でいたいとか、

心が子供なんだよ、まだ。



けいごくんは、きっと今まで出会ったことないくらい強烈に心に刻まれている。



それは、果たして恋愛感情とか、愛なのか、



私にはやっぱり分からないんだよ。

涙すら出ない。



どれだけ人を操ってきたか?

それは父さえも。



私の心が壊れるぐらい弱くなればなるほどメイが強くなってきた。



感じる、メイを。



戻ってきて欲しい私の心。

祈る。



いくつの顔がある?私は。

今だけだと、


願う。



無感情に近い。時間だけがすぎて、


気付いたらこんな時間に。

私は今までこの歳になるまで、



何をしてきた?

仕事?



仕事しか記憶が無いなんて、

本当は、



コンプレックスなくせに。


それを見抜いてたけいごくん。

やはり彼は何か違う。



明日になったらいつもの私に戻れる?

デジャブ…



ずっとずっと昔に何度も思ったこの感じ。



愛なんて分からない。

彼のことは信じているけど、愛してるのかどうかなんて分からない。



だって本当に愛された記憶が無いから。


精一杯頑張って来たことが一体誰のために何のために…。



目を閉じて月や空を思い出す。



初めて本当の涙を流した気がした。

星座盤には朝日が来ない。



けいごくんが朝日の前に立っていて、

私の心を照らし始めた気がした。


最後まで御付き合い頂き大変ありがとうございます