私には2歳違いの弟がいますにっこり


身内贔屓がすぎると言われそうですが泣き笑い、彼ほど忍耐強く心の優しい人間はいません。

歳をとればとるほどに優しさが深くなって会う度に自分を振り返させてもらえる存在ですにっこり



弟は今でいうASD(自閉スペクトラム症)とADHD(多動症、注意欠如)の子どもで、幼い頃はとにかく気持ちのままに走りまわり、衝動的に大声をあげ、集団行動がとにかく苦手で母親は幼稚園の園長に事ある毎に嫌味を言われていたのを覚えています(反対に若い女性の先生たちはとても可愛がってくれて、弟は毎日ニコニコと幼稚園に行くのを楽しんでいました)


弟は兄とはまた違った可愛らしさのある顔で、大きな目はくりくりと輝き、末っ子ということもあってかたくさん食べさせてもらった為にコロコロとしていて色白で、頬っぺたはいつも薔薇色で愛嬌があり、大人の女性達が大好きで(クレヨンしんちゃんみたいな子でしたw)、大人の女性たちはそんな弟を可愛い可愛い!と可愛がってくれ、その為にますます弟は女性が大好きになり、ニコニコと楽しそうに毎日を過ごしていました。


しかし、集団の和を乱す行動が止まらなかった為に、園長から発達障がいだ!と言われ、受けた診断でIQがとても高い事が分かりましたが、弟は関心のあるもの(電車や地図や恐竜)にだけ没頭し大人も驚くほどの記憶力と観察力で電車などについてすらすらと説明をし、立体的で精密な絵を描いたものの、他のものには全く関心を示さず、日常会話も弟の一方通行で噛み合いませんでした。

しかし年中年長と年を重ねるにつれ、衝動的な大声を出す頻度は減り(幼稚園の先生たちがとても上手に対応してくれたのだと思います)、歌の時間などは歌わないもののニコニコとしていたそうです(そして飽きると脱走しようとし、パッと先生に捕まって笑っていました泣き笑い)。



小学校では(今でこそ特別支援学級などがありますが当時は養護学校以外はありませんでしたし、弟は養護学校の対象外とされていました)、3、4年の女性担任がとにかく弟を嫌い、授業が出来ないとよく母親に訴えていた事を覚えています。

とても神経質そうな中年の女性教師は、とにかく弟をいじめ、廊下に立たせたり、黒板の前でクラスメートの方を向いて立たせたりしたそうです。

それでも、まだ心の発達が幼かった弟はあまり気にすることなく、またクラスメートたちも昔からの付き合いのある子達だったために「もー!仕方ないなぁ!弟ちゃんは!(笑)」という風に弟の行動をケラケラ軽く流しながら、男女関係なく仲良くしてくれていました(よく休み時間になると校庭で友だちたちと走りまわっていました)


1、2年と5、6年担任の先生にはとても良くしていただき、特に5、6年の当時26歳だった若い男の先生がとにかく弟の特性を理解して下さり、また弟に演技の才能があると演劇部に誘っていただきその才能を開花させたことで、弟は『ちょっと変わってるけど凄く演技が上手な男の子』という個性を持つことが出来ました。


姉の私が見ても、弟の演技は小学生の演技とは思えない不思議な魅力があり、舞台上の弟は別人のようで、特にコミカルな演技(周りが優しい人に恵まれたのでお調子者になっていたせいか爆笑)は本当に面白くて、つられて観ているこちらまでもが笑ってしまう、そんな魅力的な演技をしました。


問題児ではあるものの、常にニコニコしていた弟は見知らぬ父兄からも「おーい!弟くん!」と気軽に声をかけられるほど人懐っこく、明るい顔で毎日楽しそうでした。


※父親は弟の特性が昔の自分とそっくりだと話し、弟にだけは優しく接していましたので、私と兄ほど父親への苦手意識が当時はありませんでした(でもちゃぶ台返しの現場とかはいたんですけどね…😕?)


そんな彼を変えさせてしまったのが、中学時代です。


私と同じ地元の公立中学に入学した弟は、すぐさま演劇部に入り、たちまち(良い意味でも悪い意味でも)有名人になりました。


幸い、演劇部には私の友人がおり、部長も副部長の子も弟の事を可愛がってくれたので1年間は彼は幸せに過ごしていました。


しかし、私たちが卒業し、彼が中学2年になった頃から彼らは思春期に入り、いくら地元の中学とはいえ、広範囲のエリアから集まってきた生徒たちにとって弟は「よくわからない人間」「変な行動ばかりする、和を乱す存在」と映るようになりました。


そしていつもニコニコしているけども、会話が一方通行で言いたい事しか言わない人…と、演劇部の女の子たちから距離を置かれるようになってしまったのです。


弟としては、今まで楽しく過ごしていたのにある日突然態度を変えられてしまった事に戸惑い、とてもショックを受けていました。


そして初めて、弟の中で『自分と周りの人間の感覚は違う』のだと認識したきっかけでありました。


そして次第にクラスメートからも浮いた存在になってしまい、弟は言葉を発する事が怖くなってしまいました。


ニコニコしていた彼が笑わなくなり、言葉も発すさなくなった頃、追い討ちをかけるように演劇部の女の子から「何も言わないから嫌われる」と言われ、その言葉は今でも彼の心の傷として残っています。

(弟の勉強机にはその言葉がガリガリと削って刻まれています)



演劇部では脚本があり、セリフ通りに話せば大丈夫。

演技をするときだけ普段の表現できない気持ちを現せる…そんな気持ちで演技していたそうです。


人とどんな風にコミュニケーションをとればいいのか全く分からなくなった弟は、笑わなくなりました。



そして通信制の高校へ進学することになります→続く