
アマゾンプライムビデオで話題の短編アニメーション映画「Flow」を鑑賞しました。
この作品は、一切のセリフがないにもかかわらず、観る者の心に深く響くメッセージを投げかけます。私が特に強く感じたのは、「個」と「集団」の対比、そしてその中で紡がれる温かい絆でした。
物語の主人公は一匹の猫。ひょんなことから洪水に流され、木の舟に乗って漂流することになります。その道中で、カピバラ、サル、鳥、犬といった様々な動物たちと出会い、共に困難を乗り越えていきます。彼らが築く関係性は、言葉がなくとも互いを思いやる優しさに満ちており、観ているこちらも心が温まります。
一方で、作中に描かれる「集団」や「群れ」で行動する動物たちは、どこか雑で、個々の存在が希薄に描かれているように感じました。これは、集団の中に埋もれてしまう個の価値や、流れに身を任せることの危うさを示唆しているのかもしれません。私たち人間社会にも通じる、示唆に富んだメッセージだと感じました。
また、広大な水の世界を漂流する様子は、まるで現代版のノアの方舟を彷彿とさせます。動物たちが協力して生き抜く姿は、希望と生命の尊さを教えてくれます。
そして、全編を通して描かれる猫目線のサバイバル感には、終始ハラハラさせられました。次に何が起こるのか、彼らはどうなるのかと、釘付けになります。不思議な鳥のシーンや、巨大なクジラとの遭遇など、意味深な描写も多く、鑑賞後には「あれは何を意味していたんだろう?」と、友人と語り合いたくなるような魅力があります。
言葉がないからこそ、それぞれのシーンが観る者の解釈に委ねられ、想像力を掻き立てられます。「Flow」は、まさに五感で感じる映画。ぜひ、多くの方にこの不思議で心温まる旅を体験してほしいです。
★9(満点10)