まだ少年だった頃、青年だった頃、夏を永遠のように一瞬のように感じていました。
どのアイスを買おうかと真剣に悩んでいたこと
お祭りで初めて持った自分用のサイフ
クワガタを採るための早起き
炭酸ジュースを思い切り振って、缶に小さな穴を開け細く吹き出る炭酸を喉で受け止めたこと
塾の大学生の女の先生の揺れていたピアス
信号待ちをする、自転車に乗った開襟シャツの女の子
高校の同級生が、夏休みの間だけ始めたバイト先の年上の女の人と初体験をした事を聞いたこと
ショートパンツから伸びる脚
ドライブして海が見える瞬間に、『希望の轍』をかけようとセッティングしている時に見えてしまった海を見なかったことにしたこと
ワンピースを濡らす雨になりたい
一人暮らしの部屋で、上半身裸で食べたカレー
汗だくになった髪をウォールバックにし、鏡の前に行き色々と表情を変え格好つけ尽くしたこと
ライブ帰り、美味いとも思っていない缶ビールをコンビニで買い「金がねぇー」「モテてぇー」って合言葉を同期と叫んだ夜
どの場面も、生き生きと鮮やかでひとりよがりで永遠のようで一瞬のようだった
もう夏をそんな風に思うことはないのだろうか