先日、塩焼きそばを作りました。野菜たっぷりでそして麺は焼きそば用のものではなくスーパーに売ってるラーメン用の平打ち麺(スープとかのついていないただの平打ち麺)を使いネットで作り方を調べながら作りました。それが思いの外、美味しくできたので次の日の仕事帰りにまた無性に食べたくなりました。あの美味しさは本当だったのか確かめたい、分量などを計らずに作ったあの味がまた再現できるのか?野菜はまだあるし平打ち麺をスーパーで買って帰り、もう一度食べようと決めました。

 

しかし、スーパーに行くと平打ち麺がないのです。ちぢれ麺、細麺、太麺、焼きそば用の麺は売っているのに平打ち麺だけがない。もしかしたら他の麺で作ってもさほど変わらないかもしれないのに、昨日初めて塩焼きそばを作っただけなのに、あの美味しさの秘訣は平打ち麺だと決めつけてしまっていました。すっかり口は塩焼きそばの口になっていましたが、これは、夜はあまり炭水化物を食べるなと言う思し召しだろうと捉え、次の日のお昼にまたスーパーに行き平打ち麺を買い塩焼きそばを作ろうと楽しみを次の日に持ち越しました。

 

次の日、

 

塩焼きそばを楽しみにし過ぎていたからではないでしょうが、いつもより早く目が覚めました、「よし早速。」と思いましたがまだスーパーが開いている時間になっていません。気が気でなくその時間を待ち、開店時間になりました。が、「こいつ来るの、開店してすぐ過ぎない?」と思われないためにさらに10分ほど待ちました。いざ家を出てスーパーに向かいます。買うものはただ一つ平打ち麺。馴染みのスーパーで迷うことなく売り場に行くと、、、平打ち麺がない。

 

平打ち麺、、、が、、、ない。

 

あろうことか、平打ち麺がないのです。えっ、入荷は開店前じゃない?そもそも今日は入荷がない?理由は分かりませんがとにかく平打ち麺がないのです。しかし、僕はすぐに気持ちを切り替えます、僕の住んでいる町にはまだスーパーがあるからです。もう少し足を伸ばしそのスーパーへ

 

・・・・ない。

 

そのスーパーにも平打ち麺がありません。えっ、どういうこと?昨日同様、他の麺はあるじゃないか?それなのになぜ?最近テレビで平打ち麺特集でもされたのか?あれを食べるとウエストが細くなるのか?お肌がツルツルに?まじで仕入れの発注した奴使えねーは!俺の楽しみを邪魔しやがってと、世界は僕中心に回っていると勘違いした怒りがこみ上げます。そして、それはすぐにこんなことくらいに怒ってしまった自分への失望に変わります。たかが塩焼きそばじゃないか、心を乱されるほどのものじゃなかったさ、ここで平打ち麺に会えないってのはそれまでの関係だったんだ。もう二度と塩焼きそばなんて食べてやるか。焼きそばはやっぱりソースだろ。

 

・・・・塩焼きそば・・・・塩焼きそばが・・・・・食べたい

 

もしかしたら、まだ近くにスーパーがあるかも知れないと、グーグルマップにスーパーと打ち込みます。ズドン。赤いマークがその場所を指します。そこは隣町のスーパー。ここからは歩いて25分、この場所が家から10分、ということは帰りは35分かかることになる。早起きしたおかげで仕事までの時間はまだ充分にある、良い運動にもなる。けれど、もしそこにも無かったら・・・。負の感情がある限界を超えると、とんでもない悪魔が呼び起こされる呪いが僕にかけられていて世界を終わらせてしまうかも知れない。でも、ここで隣町のスーパーに向かわなれば僕はきっと後悔をする、いや塩焼きそばが食べたかったという事を忘れてしまって何も無かったように暮らすことになる。それじゃあんまりにも「今」が可哀想すぎるじゃないか。

 

少し暑いと感じる初夏の中、長袖シャツを腕にかけ僕は隣町へと一歩を踏み出しました。

 

 

後編につづく