季節はズレますし長くなってしまうのですが、これが書きたくてブログを始めたので読んでくれたら幸いです。

 

 

 

SNSで「金木犀が好き。」と言う言葉を見かけると、「俺が先に言ってたのに」「絶対、俺の方が好きなんだけど」「俺だけのものなのに」と思ってしまうんです。

 

もちろん、金木犀は僕だけのものでないし、みんな本当に金木犀が好きでそう言ってるのは分かっているんです。

 

桜も好きだけれど、「桜が好き。」と言うツイートを見たってそんな風には思わないんです、別に金木犀の方が桜より好きってわけではないのに、金木犀を好きって言う感性を独り占めしたくなるこの気持ちはなんなのでしょうか?

 

 

この疑問を普段お世話になっているピースの又吉さんに話した事があります。すると、又吉さんは「きっと桜は開花宣言がテレビで報じられたり、花見をみんなで楽しんだり、咲き様が見落とす事ができないほど圧倒的でそもそも共有するものであるのに対して、金木犀は何気なく歩いてる時に突然香ってきて、あっ金木犀だ!と思うけれど金木犀の姿自体は発見できなかったりするそのしおらしさが自分だけの為にある、自分だけが気づいてあげられたと錯覚させるんちゃうかなー。」とおっしゃいました。

 

んっ?「それ答えじゃん。もう多分、そうじゃん。」その答えに自分でたどり着きたかったんですけどー。

 

僕、この「金木犀を好きと言う感性を独り占めしたい」という疑問を我ながら良い疑問思いついたなと思っていたんです、そこに正しい答えがなくてもああだこうだ考えながら一人酒でもしながらいくつかの答えを出しては、誰かに聞いてもらい、その度に「ありえるかもな」「変な事考えるなお前は」って言ってもらいたかったんです。そうしていつしか答えみたいなものが出せたら良いなって思っていた矢先に、又吉さんの答えに納得させられてしまったんです。しかも、熟考もせず反応に近い感じでそう答えられてしまったのです。未来が奪われました。

 

けれど、自分で答えを出したい僕は、その又吉さんが出した答えを避けて別の答えを出そうとしました。

 

香りが象徴的な金木犀の存在は、誰からも憧れられるアイドルのような桜よりもリアリティーがあり、僕だけが知っている元恋人の背中のほくろのような特別感があるのではないか?どうだ、この答えは?・・・いや、香りが見た目よりも金木犀の特性という前提の時点で又吉さんの答えに影響されてしまっている。

 

桜が高揚感に満ちた春に咲くのに対し、金木犀が寂寥感のある秋を知らせる頃に咲くから、よりセンシティブなのではないか?・・・えっ?難しそうな言葉並べたけど、・・・どういうこと?

 

桜より金木犀を好きと言う方がマイノリティーぽいから、僕、「人と違う感性持ってます」とアピールするための道具として金木犀を好きと言ってんのにお前らあんま金木犀をメジャーに広めんじゃねぇという気持ちではないか?・・・いやいやそれではそもそも僕が金木犀を好きと言う気持ちを根底から覆して、みっともなくなってしまうし、金木犀自体の特性を何ら紐解いていない。

 

うーん。

 

僕は、何をやっているのだろうか?疑問に対して納得のできる答えがあるのに自分が出したわけじゃないと言う理由だけで、うろうろしている。もう何をしたいのかわからない。頂上以外にも素晴らしい景色があると6合目をくまなく歩いていると言うほどの美学もないし、ガラケーを使い続けるような諦めや割り切り、変化に対する恐れでもない。少しだけ不貞腐れて、もうただただうろうろしている。そして多分考えるのが面倒さくなって、俺だって本当は時間をくれたらその答えにたどり着けたはずだって自分に言い聞かして、自分の答えとして又吉さんの答えを拝借して誰かに飲み屋で偉そうに話すのだろう。

 

そして後日、この悩みを、文句を、事の発端である又吉さんに打ち明けた時のことです。又吉さんは笑いながらこう言ったのです、「その話自体が金木犀そのものやな。」「自分だけの答えを出したいと言う思いは、まさに金木犀を好きだと言う感性を独り占めしたいと言うことと一緒やん。」

 

だからーーーーー。あなたって言う人は。

 

金木犀を独り占めしたい気持ちの答えは出せなかったけど、その答えをわかっているのにまた別の答えを出そうとしたこの苦悩は僕だけのものだったのに、その苦悩は、本当は痛気持ち良さを伴ってスペシャルだったのに、まだ悩んでいたかったのに、またやりやがった。また奪われた。

 

分かっても欲しかったけど、本当は分からないって言って欲しかったんです。ほんの少し異常者に憧れてる凡人なんですよこっちは。

 

それを、金木犀という存在への疑問を持ち、今やなんだかよくわからずにウロウロとしている僕の様を見て「突然香る金木犀の在り処を探して、見失ってしまうことってあるやん、それやん!」レモンサワーグビッ。じゃないんですよ!どんどんどんどん超えてこないでくださいよ。ったく。

 

どこかから匂う夕飯のカレーの匂いに消されてしまった金木犀の香りを思い出しました。