母の日に | This is me.  システムアナリスト の日々

母の日に

父の話題


僕の父①


国民学校、後の小学校に学んだ。


初等科の義務教育を終えた彼は


彼の父の指示で、働きに出た。


学校の勉強には興味がなかった。


小遣いを貰ったことなど


結婚するまで一度もなかった。


将来の夢は?と聞かれても


ビジョンを思い描くことができなかった。


自分の弟たちは義務教育を済ませたあと


高校、大学へと進学した。


年齢が一番近く、唯一の妹は


早々と官僚の妻となり、家を出た。


製材所に勤務した。


自家保有する全ての山と林、


それに田畑の所在を覚えるのは早かった。


自然保護のため、護山会が国の要請を受け


それぞれの家が売却しないで、


子孫に譲り渡す慣例。


婚約者との初めてのデートコースは自分で立てた。


将来、自分名義に書き換えられるであろう


山の中の散歩。


「ビックリしちゃったわよ。道もないのにドンドン歩いて行くのだもの。」


という妻の言葉に、ニヤリと笑った。


端午の節句。


自分の子供の為に、鯉のぼりを立てようと思った。


山から木を1本切り出してきた。


道を曲がれず、大型トレーラーを使用した。


クレーン車も準備する必要があった。


知り合いが手を回してくれた。


人望はあった。


近所の人が手伝ってくれた。


掘り返した土が、公共の道路にはみ出ない様に


気を配っていたのは、


普段、シャベルなど持つこともない、


義理の弟だった。


真っ直ぐに立った木は、日暮れ直前、完成をみた。


拍手が起こった。


「どのくらい、の、高さ、あろうかね?」


と、紅潮した顔で尋ねる本家の叔父さんに


「15メートルだな。」


地上、約15m15cmだった。


「高すぎて、家の中から、鯉のぼりが見えないのよ。」


少し不満げな妻の言葉に、


満足げにニヤリと笑った。


「普通の人は、他の人に会ったり、公の場にいると、


家族とか、友達の前とは違って、緊張というか


話かた、とか、気負ったりするでしょ。普通は。


でも、アノ人は結婚する前も今も、


家でも外でも、全く、変わらない態度なの。


あの・ ま・ん~・ま なの!」


と、自分の妻が


その息子に話したことなど


知らない。



母の日。


今日も彼は、いつものように妻に接し、母に接し、


普段どおり、どこかへ出かけるのだろう。


2008/05/04 追記: 愛美さんへ

  ご希望の写真をアップします。
こいのぼり