さて、紀伊勝浦滞在もあと2時間ほどを残すのみ。今回の旅の第一の目的は”よみがえりの地”熊野詣でだったのですが、せっかくこんなに海の風景が素晴らしい土地を訪れ、観光船もあるのに海に出ないのはあまりにも勿体なさすぎる・・・。
そう考えて、宿泊したビジネスホテルの隣がまさに『紀の松島めぐり』乗船受付所だったのを思い出し、雲行きが少し怪しいけれど乗れる時間の船があるかな?と、駅前から港へまた戻りました。
ちょうどチケット販売所前に受付の女性が立っていたので聞いてみると、あと10分後に出発するコースがあるとのこと。50分ほどで海を観光できるというので、乗船チケットを購入しました。
本来ならその後に出航する30分のショートコースもあるようでしたが、天気と海の様子で中止になるかも知れないと聞かされたので、海と船に怖さも感じている私でしたが、外海まで出ていく50分コースに思い切って乗ってみることにしたのです。
スーツケースが大荷物なので、「こちらで預かっていただくことはできますか?」と聞くと、「大変だと思いますが、一緒に乗船していただくことになります。」という回答。私が乗る時間回は30名くらいの団体のお客さんが一緒だけれど大丈夫、と言われたので、まあ手間も無くいいか、と、またまたスーツケースをお供に乗船することになりました。
海に向けて連れて行ってくれる船は、一見心許ない、クジラの形をしたこじんまりした船。乗船して思い出しました。このシチュエーションは、10日ほど前に私が夢で見た船の上だ!と。(詳しくは5月19日のブログで書いています。)
そんなこともあり、またまた不安をもちながら乗船しました。2階立てになっている船内と階上は団体のお客さんが座るだろうと、私はあえて誰も来ない船後部の、海面に近く風と波を感じるベンチ席を定席にして出航を待ちました。
いざ出航!船のエンジンがかかりモーターが回りだし船が港から離れていくと、意外なほどのクジラ型観光船の元気良さ。熊野灘の波は、電車の車窓から見ていたように実際も結構荒々しく感じましたが、それを楽しむかのように船は元気よく揺られながら、海面からそり立つ岩の間を縫うように、紀の松島と呼ばれる変化に富む海景を見せてくれました。
そしてとうとう、数々の面白い形の岩がある内海から、広い水平線がつながった太平洋まで船は進みました。こんな小型の船で太平洋まで出て、この広い何処までも繋がる海を見ることが出来たなんて!と、私にとっては新鮮でとても気持ちのいい経験でした。心はすでに遥か彼方に飛んでいくようでした。未知のものに対する恐れは常にあっても、それを超えたところに待っている多くの素晴らしい体験をしたい。私は特に自分がそう求め続ける魂だと自覚していますが、きっと船乗りさん方もそんな気持ちを持って、海を愛するのではないかな、と思ったりもしました。
しばし大海原から見る海と空と雲の美しさを体験し、船はまた湾内に戻ってきました。特に興味をそそられたのは、切り立った岸壁の波が割れるように寄せる場所にある、ホテル浦島の洞窟温泉風呂。そこから見える海の景色は宿泊者でない限り体験し得ないのですが、一度その風呂から見る海の雄大さを見てみたいなあ、と感じました。
こうして危ないこと無く海の観光から戻り、特急南紀の出発時間まであと少し。初めての紀伊勝浦の海と港に別れを惜しみながら、しばし港の一角にある足湯スポットでゆったり足を温め、またこれから3時間半近くの名古屋までの車中記念の夕食にと、名物の”めはり寿司”をテイクアウトで作ってもらうために、観光案内所で教えてくれた食堂まで赴いた後、楽しかった思い出と共に無事帰りの列車に乗り込みました。
なんだかんだと自宅に到着したのは夜中の12時過ぎ。目一杯時間と身体を使った1泊2日の紀伊半島への旅でしたが、アラカンのくくりに突入の旅好き人間な私としては、目的がある国内での旅行なら、荷物も気にしない1泊くらいの旅が意外と楽かも・・・と考えるようになりました。
また疲れることはこれからの年代仕方ないと気にせず(というか、毎回喜びが上回ってしまうので)、毎日を元気に生きていることに感謝しながら人生=旅していこうと思います!