5月最後の日曜日、早起きしていつものスーツケースをお供に電車に乗り込みました。

 以前から温めていた念願の紀伊半島・熊野への旅を、とうとう1泊2日で実行する日が来たのです。

 

 私の場合行きたい場所があり過ぎて収拾がつかないくらいですが、最近は自分の心からの目的を第一に現実化していくことにしています。

 熊野はやはり信仰の地。神社仏閣・自然が作り上げる歴史に心魅かれる私が必ずや行きたいと願っていた場所でしたが、我が家からはあまりの遠さについ尻込みしていた土地でした。

 しかし偶然にも、つい最近観たTV番組がそんな私を後押ししてくれ、思い切って今回の旅に出ることが出来たのです。

 BSで放送していた『妄想トレイン』。ここで紹介していた旅程に倣って計画を立ててみました。

 

 まずは東海道新幹線で名古屋に降り立ち、近鉄特急に乗り換え。番組で紹介していたビスタEX号に乗りたかったので、時間的に間に合うダイヤの日曜日を選び、12時過ぎ出発のビスタEXの2階建車両の上階席を予約して乗り込みました。

 

 

 私は以前にも書いたように鉄道マニアという訳でもないのですが、旅の醍醐味は移動手段である乗り物で過ごす時間にもあります。

快適に過ごせることはもちろん、その時々で出会う乗り物の個性ある外装・内装、車窓から見渡せる風景の移り変わり。

すべてが旅を味わうことにとってとても大事な要素なので、いろんな列車に乗ってみたいと思う方です。

 

 ビスタEXの2階指定席は、座席も美しいマリンブルーで窓も大きく作られていて、景色を眺めながら思いを馳せるひと時は、大変気持ちの良い体験でした。2階建列車の階下はグループ用のラウンジ風座席になっているので、家族や仲間との旅ならここを予約指定すれば個室感覚で楽しそうだな、と思いました。伊勢・志摩方面に向かう列車ですが、私はこれで1時間ちょっと、途中停車駅である松阪駅で降りました。

 

 松阪といえば”松阪牛”。こちらも番組で知った松坂牛弁当を昼ごはんにするために、あらかじめ持ち帰りをTEL予約していたお弁当のあら竹本店へ。初めて降り立った松阪の駅前は、広々として大きな通りが伸びていて、その通りの右側にある店でほかほかの弁当を受け取りました。女将さんもとても感じの良い方で、帰り際に「良い旅を😊」と送り出していただいたその温かい一言に心和みました。

 

 今回の宿泊地である”紀伊勝浦”まで向かう列車、JRの”南紀”到着時間までは時間があったので、お腹も空いたことだし、列車を待つホーム内でお弁当を完食。インパクトある牛のフェイス型の松坂牛弁当を堪能しました。蓋を開けると『ふるさと』のメロディーが流れて楽しかったのですが意外とコンパクトな量だったので、家から持ってきたパウンドケーキも長い道中おやつで食べようと、ホームで牛乳を買ってから特急南紀号に乗車しました。

 

 ”南紀”は名古屋と紀伊勝浦間を走る特急列車なので、復路は紀伊勝浦から一本で名古屋まで帰りましたが、それでも3時間半ほど。ここが一番長い道のりでした。先日の京都市内から海の京都までの旅も遠いと感じましたが、今回もはるばる旅した感覚が強かったです。でも、やはりそれだけ時間ををかけても行った甲斐のある場所は至る所に存在するのだと、ますます旅へのあくなき欲求が高まるばかりなのですが・・・。

 

 紀伊半島の先、紀伊勝浦方面に行くのに鉄道を使う手段はJRのみのようです。特急南紀には初めて乗りましたが、2か3車両編成のシンプルな列車です。座席は真ん中の通路からは一段高く段差がついていて、そのことが共有スペースと区別されていていい感じだなと思った反面、足の悪い人や重い荷物を持った人にとっては少しの段差も危ないかも、と思ってしまいました。しかし旅の路線を走る列車ならでは。窓ガラスは大きく広くとられていて、充分景色を楽しむことが出来ます。

 乗車中スピードを上げる時にか、何回か高らかに鳴らされた列車のサイレンが、乗っていて心に響く郷愁をそそる音となったのも、列車旅の思い出のひとつです。

 熊野詣でへの拠点となる熊野駅の手前辺りから新宮駅、紀伊勝浦へと続く海岸線に沿った車窓は、ゴツゴツした岩の多い、視界が開けた海が見える所でした。”熊野灘”と言われる太平洋に面した海の光景は、私がまた今まで見た海とも異なった、雄大で荒々しく、勢いの良い波が海岸や海に切り立つ岩にしぶきをあげてぶつかってくる、少し怖さすら感じる神聖なものでした。眺める者を大海原の彼方まで誘い飲み込んでしまうような恐ろしさがありましたが、そこに余計心を奪われていくのを感じました。

 

 

 午後2時20分ごろ松阪駅を出て2時間強の時間が経ち、とうとう人が生活する”港”の見える終点駅”紀伊勝浦駅”に到着しました。駅前に降り立つと、古くから漁港として開けた土地の雰囲気がよく感じられ、普段海のない平野で暮らす私には新鮮でウキウキする第一歩でした。駅から港までわかりやすく歩いて5分余り、漁船に魚市場や観光船発着場のある明るい港が見えてきて、私はその日に泊まる予約をした、港を望むビジネスホテルにチェックインしました。

 

 立地は申し分のない、駅にも港と海の観光にも便利で最高な雰囲気。TV番組では本当はここから宿泊先として、船で渡って直ぐの中の島という島に建つラグジュアリーホテルを提案していて、海を眺める特別な景色と優雅さにも惹かれましたが、誰かと共にのんびり泊まるのが目的ではない今回の一人旅だったので、そこはコスト削減で気楽なビジネスホテルを選びました。

 ただ、旅の疲れを癒すお風呂だけはゆったり入りたいと考え、チェックイン後は街歩きを兼ねて、ホテルから一番近いと思われる大規模ホテルの温泉に入りに外出、徒歩10分弱で到着し、海を眺める露天風呂もあるゆったりとした温泉風呂で、その日の朝早くからの鉄道移動の疲れを癒すことが出来ました。

 

 

 天気に恵まれた日中の太陽も沈み、辺りが暗くなってきたホテルに帰る道すがら、目星をつけていた食事処で”まぐろ定食”と”くじらのハム”なるものを食べて帰りました。昔私の小学校時代は、給食でくじらの竜田揚げなど鯨肉がまだ普通に食べられていて、その美味しさが今でも忘れられない思い出として残っていますが、昨今は日常で鯨を食することもなく、ましてや赤身のハム状肉は初めてでした。味が特別かどうかは正直あまりピンときませんでしたが、旅の土地の記念として有り難く頂き、朝から移動に費やした長い一日を楽しく締めくくりました。

 港の夜景は静まり返りながらも所々の電灯に照らされ明るく、私はホテルの窓からそれを時折眺めつつも、明日の朝早くからの目的、熊野三山めぐりのことを思い、早めにベッドに横になりました。

 〜以後、翌日の話②熊野三山めぐり編に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

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