【要件事実論】特許法103条の推定規定 | ポムポムのブログ

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働きながら予備試験・司法試験を受験したポムポムのブログです

さっきの記事で「法律上の推定」のことを書いていて気になることがありました。

恐らく、司法試験の論文選択科目、弁理士試験において合否には一切関係ないと思われる事ですが、私にとっては、一度気になり出すと非常に気になる箇所です。

それは、特許法103条の推定規定が、
・法律上の事実推定の規定なのか
・法律上の権利推定の規定なのか
・暫定真実なのか
という、本当にどうでも良いような話です。
(独学で要件事実論を学ぶことの限界からくる理解不足にも、これが気になる大きな原因があるような気もします。)


特許法103条は、「他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する」と規定します。

特許法の学習経験の無い司法試験・予備試験受験生の方は、とりあえず、
特許権=所有権
専用実施権=地上権
というイメージを持たれると、比較的実際と近いかも知れません。あくまでイメージ的な話ですが。
(特許権の効力については特許法68条本文、専用実施権の効力については同法77条2項、専用実施権が設定された場合における特許権の一般的効力については同法68条但書、なお、実施の意義については同法2条3項各号参照。)

特許法の条文


さて、本題に入りますと、法律上の推定のうち、
法律上の事実推定とは、前提事実を立証し、これに推定規定を適用して別個の事実の存在を推定させることを言い、
法律上の権利推定とは、前提事実を立証し、これに推定規定を適用して別個の権利又は法律関係の存在を推定させることを言うとされます(岡口基一・要件事実マニュアル1巻・4版33頁参照)。


ところで、一般に、特許権者又は専用実施権者は、当該特許権又は専用実施権の侵害者に対して、民法709条に基づいて損害賠償請求ができると解されています。

実務で採られているとされる法律要件分類説によれば、本来的には、訴訟において特許権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求をする原告において、被告の故意又は過失の評価根拠事実を主張立証する必要があります。

もっとも、上記特許法103条の「他人の特許権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する」との規定から、被告側に立証責任が転換され、被告は、自己に過失がなかったことを基礎付ける事実を主張立証すべきことになります。

ここまでは、どの基本書にも書いてありますし、資格試験的にはここまで押さえれば十分な気がします。


ところが、先ず、私は、103条が法律上の事実推定の規定なのか、それとも、法律上の権利推定の規定なのかという点が気になり始めました。

「過失」とは、法的評価であって、事実そのものではないので、事実を推定するという法律上の事実推定ではないような気がしました。

一方、「過失」とは、あくまで法的評価であって、権利又は法律関係そのものではありません。
この場合、不法行為に基づく損害賠償請求権を基礎付ける要件の一つにすぎません。
そうすると、法律上の権利推定でもないような気がします。


次に、私は、103条は暫定真実の規定ではないかとも考えてみました。

暫定真実とは、法律効果の発生原因事実として規定されている事実があるが、別の規定が存在することにより、その不存在が法律効果の発生障害事実となる場合を言います(岡口基一著「要件事実マニュアル1巻」4版36頁)。
典型例としては民法162条1項の場合や、商法503条1項の場合が同書に挙げられています。

長期取得時効について定めた民法162条1項を例にとると、
同条項は「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する」と規定しています。

つまり、長期取得時効の条文上の要件は、①所有の意思をもって、②平穏に、かつ、③公然と、④他人の物を、⑤20年間、⑥占有したことです。

もっとも、判例により、「他人の物」であることは取得時効の要件ではないとされているので、の要件を主張することに法律上の意味はないことになります。
⑤について、ここでは民法186条2項に触れないこととします。)

そして、民法186条1項は「占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する」と規定しています。
そうすると、①所有の意思をもって、②平穏に、かつ、③公然と、との要件は、民法186条1項により無前提で推定されることになるため、取得時効の成立を争う者において、これらの事実の不存在(所有の意思がないこと、平穏でないこと、公然ではないこと)の主張立証しなければなりません。
この民法186条1項の様な無前提での推定により、相手方がそれらの事実の不存在を争わなければならないものが、一般に暫定真実と呼ばれるものです(たぶん)。

この様に考えてくると、特許法103条は、無前提で過失を推定しているため、暫定真実ではないかという気がしてきます。

ここまで色々と考えましたが、もう分からなくなってきました。


この点について、学者の基本書はもちろん、高部編「特許訴訟の実務」の高部執筆部分等にも記載がなかったので、恐らくどうでも良い話なのでしょう。

私にとって要件事実論の予備校講義は何の役にも立たなかったのでこの辺りの要件事実論って独学では非常に理解が難しく、また資格試験的にはどーでも良い様な気がするので、ここで一旦考えるのを止めます。


専門家の方で、この記事を読んで「コイツ、馬鹿だな」と思われた方は、温かく見守って下さいますようお願い申し上げます。