日々投資ブログを更新する外科系集中治療医。
そんな私がお送りする、大型連休の医療コラム。「安楽死と寝たきり老人」について。
前回の記事はこちら。
「寝たきり」「延命」
そういうワードが出てくると、外せないのが「胃瘻」の話である。
食べられなくなった患者に栄養を投与する手段は限られている。
どれも一長一短、メリットとデメリットがある。
腸が元気なうちは、腸を利用するのが一番。
鼻から管を入れて、直接流動食を入れる方法がある。
点滴で栄養を投与することもある。
一般的な点滴、すなわち手や腕に針を留置する方法では、1日に必要な十分な栄養を投与することは出来ない。
多量の栄養を身体に補給するためには、首や足の付け根にあるような太い血管から点滴する必要がある。(中心静脈栄養という。)
上記のいずれも、長期の使用は推奨されない。
そこで登場するのが胃瘻である。
様々なメリットはあるだろうが、医療/介護を提供する側として一番なのは「簡便」であるということだろう。
もちろん定期的なメンテナンスや衛星処置は存在するから、誰もが胃瘻の処置をできるわけではない。
でも、ずっと患者に付き添って食事を食べさせたり、鼻管や点滴の管理をしたりするよりは、患者側も医療提供側も負担が少ないし安全である。
胃瘻は基本的には、患者が口から食べられるようになるまでの仲立ちである。
ある程度口から食べられる患者、あるいはそれが見込まれる患者に対して胃瘻を作ることが望ましい。
全く意識のない、意思疎通もできずに寝たきりの患者の延命手段としては推奨されていないし、実際現場でもそういった患者には胃瘻を作らないことが多いと思う。
でも、これがなかなか難しい...。
当然だが、当初の予想通りに食べられるようになれば胃瘻は不要である。
胃瘻の器具を身体から引き抜いてしまえば、孔は勝手に閉じてしまう。特別な処置は必要ない。
問題なのは食べられるようにならなかったとき。
これは結果論として「延命処置」としての胃瘻になってしまう。
実際自力で食べられないような患者は、帰結としてどうしてもベッド上で寝たきりになる傾向が高い。
こうして「寝たきり」の胃瘻患者が出来上がってしまう。
実際に口から食べられるまで回復する患者もいる。退院して自宅で生活できるようになる人もいる。
回復するケースがある以上、患者と家族には治療のオプションとして伝える必要があるのだ。
長くなってきたので、次回へ続く。次回が最終回...かも。