梅雨も明け、暴力的な日差しが僕たちを襲う。
自然の力には、到底かなわない。
僕はそう諦めていた。
しかし、妻は違った。
「これ使って」
差し出した手の平には、バンダナが一枚。
「ありがとう」
全貌を把握しないまま受け取ると、全身に冷気が宿る。
バンダナで、保冷剤を包んでいるのだ。
「これを首に巻いて歩けば、少しは良くなるんじゃない?」
妻の言いつけ通り、それを首に巻いて歩く。
あぁ、快適。
暑さを諸共せずに、軽やかに歩く僕たち
感謝を告げようと、妻を見る。
赤いバンダナをスカーフのように巻いている。
その姿が、昭和の大女優のように美しい。
せっかく下がった体温が、また上がってしまった。
水がぶ飲みしながら、午前中を乗り切る。
わっぱ弁当の蓋を開ける。
昨晩、冷蔵庫を開けた時に、タレに漬けられていた鶏肉を確認。
今日のお昼ご飯だったら嬉しいな。
そんなことを考えていた矢先の登場。
真っ先に鶏肉にかぶりつく。
うめえ……。
しっかりと漬け込んだ成果が、しっかりと出ている。
噛むほどに広がる、和の風味。
そして、赤子の肌のように柔らかい鶏肉。
午前中の疲れが、青空に吸い込まれていく。
鶏肉をおかずにご飯をかき込むと、あさりの佃煮が現れる。
これがまぁ美味しいんだ。
お義母さん、ありがとうございます。
そして、安心安全の卵焼き。
今日は一つしかないので、いつも以上にゆっくり大切に噛み締める。
噛み締めることで伝わる、風味、旨味、優しさ。
人間も同じだろう。
抱き締めることで伝わる、愛、思いやり、優しさ。
僕たち人間は、深い愛を求め長い人生という旅にあっ絶対この話まとめられない。
妻に感謝し、完食。ごちそうさまでした。
・まとめの一言
ごちそうさまでした。