市場の仕事は遅くても午後3時には終わる。
友達はその時間は学校か仕事。
誰も遊び相手がいない。
暇だ…![]()
そんな時、当時入っていたテニスサークルで、大学2年のナカさんが「皿洗いで時給1000円もらってる」と話してるのを聞いた。
その頃コンビニの時給が5~600円くらいだったと思う。
詳しく聞くとサークル仲間のマサ君(板前)が働いている銀座の料理屋さんで、バイトをしていると教えてくれた。
暇を持て余していた私は、マサ君に頼んでバイトさせてもらえないか聞いてもらった。
後日面接をして、採用になった。
そこに行くまで、そのお店がどんな店かも知らず…若いって恐ろしい。
銀座8丁目にある高級な料理屋さんだった。
ちょっとしたドレスコードがある様な店で、ビルの8・9階。
黒服の品の良い60代くらいのマネージャーがいた。
まるでドラマに出てくる執事のようで、「こんなカッコイイおじいちゃんは見た事がない」と思った。
初めて見た高級な雰囲気、大人の世界って感じ。
私は、洗い場ではなくホールになった。
着物を着て接客。
初めての着付けは、おかみさんがやってくれた。
小柄で可愛らしい、感じの良い人だった。
お客様は、名のある会社の上層部の方が多かった。
お客様が来ると「あの方は日航の…、あの方は資生堂の…」と役職は忘れたけど、皆さんエライ人ばかりだった。
ウイスキーなどの注文は、テーブルまで氷や水を持って行って作って出す。
ウイスキーなんてシャレたものなんて作ったことないよ![]()
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それもお偉いおじさまの前で作るなんて、粗相があってはいけない。
あまりの緊張で1週間で3キロやせた。
風邪ひいて食事ができなくても、痩せた事がなかったのに。
たまらず、おかみさんにお願いして洗い場に変えてもらった。
ここでも緊張した。
なぜなら、ナカさんが「その皿、割ったら1ヶ月分の給料飛ぶから」
えーっ![]()
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でもホールより全然いい、人に気を使うより全然ラク![]()
板前さん達も皆さん優しい。
オーダーミスで作ってしまった「黒アワビのステーキ」を証拠隠滅のために、板場の皆で食べたこともあった。
初めて食べた超高級アワビ、メッチャ美味しかった![]()
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楽しい板場も、ダンナさんが現れると空気が一変する。
スゴイ緊張感に包まれ、途端に板前さん達はピシっとなる。
ギョロッとした目で見られると、凄く怖かったな![]()
でもね若いとは言えWワークはきつかった。
午後4~9時のシフトなんだけど、忙しくてとてもじゃないけど「お先に失礼します」なんて言える雰囲気じゃなくて結局10時すぎまで。
家に着くのは12時近く。
翌朝は5時半には家を出ないと市場に間に合わない。
寝ぼけて、ビオレで歯を磨いたことも2度3度![]()
結局4ヶ月足らずで、「会社にばれたので」と言って辞めさせてもらった。
こんな短い期間なのに、それも40年近くも前の事なのに、不思議と覚えている。
ダンナさん・おかみさん・チーママ(指導係)・マネージャーの顔、店や調理場の内装。
断片的だけど、板前さんのやり取りや出来事も情景が浮かぶ。
それだけ田舎者で世間知らずの小娘には、インパクトが大きかったんだろうな…
前置きが長くなっちゃったけど、このお店は「銀座ろくさん亭」
和食の鉄人、道場六三郎さんの店。
もっともこの頃はまだ「料理の鉄人」なんて番組やってなかったけど。
今日、道場さんが「徹子の部屋」に出たとヤフーニュースで見て、
久しぶりに思い出した。
懐かしいな![]()
89歳だって、ビックリ![]()
私の父と同じ歳だって初めて知った。