高校卒業後、築地市場で働きながらメイクアップアーティストの学校に通っていた。
 
今みたいに情報を集めることは簡単ではなく、通い初めてしばらくして学校に通ってなれるものじゃないと悟った。
 
そして3ヶ月も行かずやめた。
 
 

市場の仕事は遅くても午後3時には終わる。

 

友達はその時間は学校か仕事。

誰も遊び相手がいない。

 

暇だ…もやもや

 

 

そんな時、当時入っていたテニスサークルで、大学2年のナカさんが「皿洗いで時給1000円もらってる」と話してるのを聞いた。

 

その頃コンビニの時給が5~600円くらいだったと思う。

 

詳しく聞くとサークル仲間のマサ君(板前)が働いている銀座の料理屋さんで、バイトをしていると教えてくれた。

 

暇を持て余していた私は、マサ君に頼んでバイトさせてもらえないか聞いてもらった。

 

後日面接をして、採用になった。

 

そこに行くまで、そのお店がどんな店かも知らず…若いって恐ろしい。

 

銀座8丁目にある高級な料理屋さんだった。

 

ちょっとしたドレスコードがある様な店で、ビルの8・9階。

 

黒服の品の良い60代くらいのマネージャーがいた。

まるでドラマに出てくる執事のようで、「こんなカッコイイおじいちゃんは見た事がない」と思った。

 

初めて見た高級な雰囲気、大人の世界って感じ。

 

私は、洗い場ではなくホールになった。

着物を着て接客。

 

初めての着付けは、おかみさんがやってくれた。

小柄で可愛らしい、感じの良い人だった。

 

お客様は、名のある会社の上層部の方が多かった。

 

お客様が来ると「あの方は日航の…、あの方は資生堂の…」と役職は忘れたけど、皆さんエライ人ばかりだった。

 

ウイスキーなどの注文は、テーブルまで氷や水を持って行って作って出す。

 

ウイスキーなんてシャレたものなんて作ったことないよガーンあせる

それもお偉いおじさまの前で作るなんて、粗相があってはいけない。

 

あまりの緊張で1週間で3キロやせた。

風邪ひいて食事ができなくても、痩せた事がなかったのに。

 

たまらず、おかみさんにお願いして洗い場に変えてもらった。

 

 

ここでも緊張した。

なぜなら、ナカさんが「その皿、割ったら1ヶ月分の給料飛ぶから」

 

えーっガーン汗

 

でもホールより全然いい、人に気を使うより全然ラクニコ

 

板前さん達も皆さん優しい。

 

オーダーミスで作ってしまった「黒アワビのステーキ」を証拠隠滅のために、板場の皆で食べたこともあった。

 

初めて食べた超高級アワビ、メッチャ美味しかったラブラブラブラブ

 

 

楽しい板場も、ダンナさんが現れると空気が一変する。

スゴイ緊張感に包まれ、途端に板前さん達はピシっとなる。

 

ギョロッとした目で見られると、凄く怖かったなアセアセ

 

 

 

でもね若いとは言えWワークはきつかった。

 

午後4~9時のシフトなんだけど、忙しくてとてもじゃないけど「お先に失礼します」なんて言える雰囲気じゃなくて結局10時すぎまで。

 

家に着くのは12時近く。

翌朝は5時半には家を出ないと市場に間に合わない。

 

寝ぼけて、ビオレで歯を磨いたことも2度3度もやもや

 

結局4ヶ月足らずで、「会社にばれたので」と言って辞めさせてもらった。

 

 

こんな短い期間なのに、それも40年近くも前の事なのに、不思議と覚えている。

ダンナさん・おかみさん・チーママ(指導係)・マネージャーの顔、店や調理場の内装。

 

断片的だけど、板前さんのやり取りや出来事も情景が浮かぶ。

 

それだけ田舎者で世間知らずの小娘には、インパクトが大きかったんだろうな…

 

 

前置きが長くなっちゃったけど、このお店は「銀座ろくさん亭」

和食の鉄人、道場六三郎さんの店。

 

もっともこの頃はまだ「料理の鉄人」なんて番組やってなかったけど。

 

 

今日、道場さんが「徹子の部屋」に出たとヤフーニュースで見て、

久しぶりに思い出した。

 

懐かしいな照れ

 

89歳だって、ビックリ!

私の父と同じ歳だって初めて知った。

 

 
そうそう、「料理の鉄人」を観てて
「あれってお前がバイトしてた店のダンナさんじゃないの?」と先に気づいたのは、旦那さんだった。
 
私の話をちゃんと聞いて覚えていてくれたことが、嬉しかったのも思い出した。
 
 
そうそして、その頃もらったお給料、会社もバイトもほぼ同額で両方合わせると月に25万円くらいになった。
 
 
若いって恐ろしい…
洋服や靴、遊びに全て使い切ったアセアセ
 
 
 
ちなみに、その当時の大卒の初任給は14~15万円くらいだったらしいびっくり汗