新刊がでました。
発売から早3日。予約していたので即日に2~3回読みましたが、育テで忙しく記事がまとめられませんでした。
今回も涙なしでは読めない内容でしたね。
内容は大したことないですが、ネタバレ含む感想ですので、まだの方は回れ右推奨です。
『二月の勝者(19)』
まだ5年生ですが、中学受験に挑む娘を持つ親としてタイムリーにこの作品を読めることで、作品を何倍を楽しむことができているのではないかと思います。
さて、今回は前巻に続き、首都圏の大詰めである2月3日~5日の出来事。
2日間の間に多くの生徒の合否や進学先が決まっていく様子が描かれています。
私の個人的な印象ポイントは3つ。
・やり切った中学受験
・人は必ず頑張って努力しなければいけないのか
・大人の感情、子供の感情
やり切った中学受験
同じ目標を本気で目指して全力で戦った島津君と上杉君の結果発表。
結果を冷静に受け止めての発言。
『自分的にはやり切った感がある、、チャレンジさせてもらえただけで満足』
『しょうがないよね、わかってたことだから。チャレンジさせてもらえただけでもよかったから』
2人の発言に同じキーワード『チャレンジさせてもらえただけで』が入っています。
2人とも第一志望を巡っては、親と色々あったので、自然と出た言葉なのかもしれません。
結果はどうあれ、親子で納得し、受けたい学校に全力で挑めたことで中学受験そのものは悔いが残らなかった、それは成功だと言わんばかりの作者の想い。
ある対談記事で作者の高瀬志帆さんは、中学受験の成功は『家族と本人の満足度』であると話されていますから、この描写からもそのメッセージが強く感じられます。
この想いの対照的に描かれているのが今川里依紗さんと原秀道君。
この二人は自分の意志とは関係ない受験校選択になり、家族と本人の満足度は低い。結果としては満足度があがる展開になりかけているので、救われるのだと思いますが、前者の二人と対照的となっているため、両者がよく際立ちます。
ただ忘れてはいけないのは、けして悔しくないわけではないということ。
島津君と上杉君の別れの後のシーンにそれが凝縮されていて、読んでいてこみあげてくるものがありました。
もっとこうしていたら、もしもああだったらと思わないはずはありません。
受験に「もしも」はない、悔しい気持ちは残っても、親子で満足できる中学受験をしたいものです。
人は必ず頑張って努力しなければいけないのでしょうか
いつも強気の黒木先生のらしくない言葉です。
但し、ほぼすべてが終わった今だからの言葉とも言えます。
もう受験終了でこれまで十分がんばってきたので、
「もう君は十分がんばったよ。がんばらなくてもいいんだよ」 くろを。
という感じでしょうか。
少年ジャンプならラスボスとの戦いに努力、根性、成長という展開ですが、さすが青年漫画。
この終盤にみつを節で、中年の心に突き刺さります。
そして、この言葉の発言前にあった言葉にもひどく考えさせられます。
「自分で目標を決めて、そのために努力して、叶わなくてしっかりと悔しがる。そういった人生に必要な感情をあの子が学びとってくれないことには。」
「親がかってに受験校決めておいて、おまゆう?」 ココパパを。
なんですが、中学受験をしていると志望校選びから普段の勉強、テスト結果の反省まで自主性や自走心を要求しがちです。
でもまだ12歳。昔の武家で元服するわけじゃあるまし、この令和の多様性が尊重される時代で、まだ12歳の子どもが自分で決められなくったっていい。
改めて自分の態度を省みるきっかけになりました。
二月の勝者はフィクションだけど、色々な家族の受験の姿を見ることができます。
強い意志をもって受験校を選択し、結果に死ぬほど悔しがる子もいればそうでない子もいます。
現実だってそれが普通だと思います。
12歳時点の自主性のありなし、濃淡でその人の人生は決まらない。
大人の感情、子供の感情
親子の受験とも言われる中学受験。
本作では親の気持ち、感情の揺れが良く描かれています。
「たぶんさっきのが、息子の手を握る最後」
加藤匠君のお母さんの心情、響きますねー。
中学受験は子離れする一つの節目になるだろうなと想像します。
合否の結果は子供より親、大人の方が時にはこたえます。
娘のココも本作を読みましたが、にやにやしながら読む程度で感動した様子は全く見られませんでした。
それに対して、私は涙なしでは。。。
娘の手を握るのがあと1年後が最後なんて想像するだけで涙もの。
大人は今までの経験などから感情移入、共感がしやすい。
子ども頑張りを間近で見てたからなおさら。
子供のように「落ちちゃいました。すみません。」と気持ちよくはなかなか言えないでしょう。
原君や今川さんのお母さんのように取り乱したり、へらっちゃったりしてしまい、気持ちの整理が追いつかないのは手に取るようにわかります。
佐倉先生は極端な例でしょうが、子供のことを思い込み過ぎてしまう。
立ち上がるまるみちゃん、原君、里依紗。
たぶん子供は大人が思っているより強いかもしれない。そんな気持ちを抱かせてくれます。
もっと軽い感想を書くつもりでしたが、ついつい色々思ったことをだらだらと書き連ねてしまいました。
登場人物が多すぎる作品は内容がぼやけがちですが、本作は中学受験の形がいろいろあること、中学受験の数だけ親子の物語があるということを伝えるために、各登場人物は必要不可欠となっています。
物語はもうラストスパート。
新刊がでたばっかりですが、ほんとうに続きが楽しみです