◾️『I Love You』
◾️オーディションでの『ダンスホール』
◾️『I Love You』歌詞
「I LOVE YOU」歌詞
歌:尾崎豊
作詞:尾崎豊
作曲:尾崎豊
I love you 今だけは悲しい歌聞きたくないよ
I love you 逃れ逃れ辿り着いたこの部屋
何もかも許された恋じゃないから
二人はまるで捨て猫みたい
この部屋は落葉に埋もれた空き箱みたい
だからおまえは小猫の様な泣き声で
※きしむベッドの上で優しさを持ちより
きつく躰 抱きしめあえば
それからまた二人は目を閉じるよ
悲しい歌に愛がしらけてしまわぬ様に※
I love you 若すぎる二人の愛には触れられぬ秘密がある
I love you 今の暮しの中では辿り着けない
ひとつに重なり生きてゆく恋を
夢みて傷つくだけの二人だよ
何度も愛してるって聞くおまえは
この愛なしでは生きてさえゆけないと
(※くり返し)
それからまた二人は目を閉じるよ
悲しい歌に愛がしらけてしまわぬ様に
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1992年に26歳で他界されてから32年経つ尾崎豊さんですがその楽曲は色褪せることがまったくありません。
今でもその激しい息遣いとシャウトがDVDや動画の映像から迫ってくるようで生きた伝説そのままです。
その尾崎豊さんは若干16歳でソニーのオーディションを受けましたがその際披露した楽曲の一つが『ダンスホール』という曲でした。
このダンスホールには制作する際次のような秘話があります。
尾崎豊さんが高校時代に新宿のディスコで女子中学生が車で連れ去られ車の中でアキレス腱を切られ殺害されるという事件がありました。尾崎さんはそのディスコの常連でその事件の被害者である女子中学生と知り合いでありその少女の鎮魂歌としてこの『ダンスホール』を作りました。その女子中学生をモデルに当時ディスコに群がっていた少女達の風俗を描いた曲とのことです。
私も10代でこの曲を初めて聞いた時当時のディスコのワンシーンを高校生の視点で鋭く切り取って歌にした尾崎さんの鋭い感性とそのクリエイティブな才能に衝撃を受けました。
ディスコで起こった殺人事件について知ったのはだいぶ後のことで大人になってからですが犠牲になった女子中学生に対する鎮魂歌だと知って更なる衝撃を受けました。
尾崎さんの担当ディレクターである須藤晃さんがおっしゃっているようにオーディションで尾崎さんはとても暖かい心でこの曲を歌っているのが印象的です。
犠牲になった女子中学生への尾崎さんの暖かい愛が伝わってきます。
尾崎豊さんの3rdアルバムである『壊れた扉』からに『米軍キャンプ』という曲がありますがこの曲に出てくる女性も『ダンスホール』と同じ女性がモデルだと言われています。
ここに出てくる女性は水商売のアルバイトをやっていますが主人公の高校生とは深い関係になった末この恋愛は破局を迎えます。
犠牲になった女子中学生は尾崎さんの中で大きな比重を占めているように思います。
それならば尾崎豊さんの代表曲である『I Love You』に出てくる女性も同じ女性がモデルではないかと頭に閃きました。
私はこの尾崎豊さんの『I Love You』という曲の「若すぎる二人の愛には触れられぬ秘密がある」というフレーズに出てくる“秘密”の意味を長年掴むことが出来ずモヤモヤしていました。
もし『I Love You』に出てくる女性が女子中学生ならこの“秘密”の意味が明確になります。
女子中学生と男子高校生との肉体関係を伴う恋愛は世間が許しません。
双方の両親も学校の教師達も世間の大人達も認めません。
そればかりか同級生達も認める人はほとんどいないでしょう。
この『I Love You』の二人はどこにも居場所がなく逃避行の末駆け落ち同然にたどり着いた秘密の部屋で二人だけの密会をし肉体関係を伴う愛を交わすのです。
そして恐らく彼女は度重なる密会でもう既に主人公の子供を身ごもっている。
妊娠してしまっている。
それこそが“秘密”の核心でしょう。
「何度も愛してるって聞くお前は この愛無しでは生きてさえ行けないと」とありますが何度も「愛してる?」と聞き返すということは二人の関係が不安定で不安だから彼女は何度も愛を確認するのでありうまくいっていない恋愛なのです。
彼女は中絶して心身ともに弱っていて男の愛に仕切りに縋るのか?しかし男の方は愛が冷めてしまっていて「愛してる」を機械的に繰り返すのか?そんな情景が頭に浮かびます。
この曲のタイトルは『I Love You』ですがこの歌の登場人物の二人は決して熱烈に愛し合っている幸せ絶頂の恋愛では無く傷つき憔悴している彼女の「愛してる?」の弱々しく縋るような問いかけに対して場を白けさせないように形だけの「愛してる」のセリフを男が延々と繰り返して答えるだけの壊れかけた恋愛であり終わりかけの愛の営みなのです。
彼女の方は二人の将来をまだ夢見て男の愛に縋るのだけれど男の方はこの愛の行く末に絶望し愛の魔法が解けて冷めてしまっていてラジオから流れてくる悲しい歌を消す気力も無くベッドの上でせめて残された力を振り絞って優しさを持ち寄るのが残された精一杯の行為なのでしょう。
もうすぐ滅び行く運命の末期の愛を二人だけの世界に閉じこもり互いの優しさを持ち寄ることでつかの間守ろうとしているのです。
しかしもうすぐ消え行く運命のつかの間の儚い愛なのです。
悲しい歌くらいで駄目になるほど脆くなっている崩壊寸前の愛なのです。
主人公の男にはこの愛の終着駅が見えているのです。
この恋愛は破局が近いのです。
状況を何とか打開したいと主人公は思うのですが高校生と中学生では結婚して親から独立してやっていくのは不可能で二人だけの世界に逃避するしか他に出来ることは何も無いのです。
集められるだけの優しさを持ち寄って束の間の愛をベッドの上で交わし二人だけの世界に逃げ込む無力な未成年の恋愛の絶望的な状況が聴くものを泣かせます。
高校生同士ならここまでの絶望は無いでしょう。
一旦中絶してお互い傷ついてももし二人の愛がまだ生きているのなら改めて将来を誓い合い卒業するまで2〜3年我慢すればいいのですから。
相手が女子中学生となると状況は遥かに困難になり二人の将来はまさに絶望です。
女子中学生の内申書にも響くし高校生の主人公も発覚したら退学ものです。
では学校を辞めて働くのか?
二人とも中卒では経済的に自立してやっていくのは困難です。
「一つに重なり生きてゆく恋を 夢見て傷つくだけの」二人なのです。
若すぎる二人は一緒になることを夢見ても今の暮らしの中ではどうやっても安住の地に辿り着くことは出来ないのです。
長年モヤモヤしていたこの歌の深い意味とその秘密がようやくわかった気がします。
現実問題として社会がこの未成年の二人の愛を祝福して受け入れることは決してありません。
未成年の不純異性交遊は認めないのが当時も今も一貫した社会通念であり共同条理の原理だからです。
道徳的規範の維持や未成年保護の観点から女子中学生の妊娠のリスクを伴う肉体関係に発展した深い恋愛は社会が認めないからです。
相手の男子高校生も同じ未成年同士とは言え同義的責任を社会から糾弾されます。
世間知らずと誰もが許さない恋なのです。
法律では12歳以上の女子と13歳以上の男子は親の同意があれば婚姻が認められているのに実際は世間が許さず叶わないのです。
恋愛・交際の禁止というのは憲法13条の幸福追求権・人格権に対する明らかな侵害である筈なのに若い二人の純粋な愛を社会規範を優先する親や学校や社会の共同体が引き裂くのが現実なのです。
若く純粋な愛であるゆえに大人社会の論理とその共同条理の壁に引き裂かれる構図なのです。
この二人は愛に目覚めるのが人よりちょっと早かっただけで何の罪も犯していない筈なのに・・・。
当事者の立場になって真面目に考えると恋愛を外部の力によって引き裂かれるのは一方的な人権侵害なのだから当事者にとってはまったく理不尽な話なのです。
この『I Love You』という歌の解釈を掘り下げていくと未成年の恋愛はこれを外部の力によって引き裂くことは憲法に違反する重大な人権侵害であるにも関わらず実際妊娠という状況になったら誰にもどうすることも出来ないという現実に突き当たります。
未成年同士の恋愛は行くところまで行くと社会の共同条理の原理という壁に否応なくぶち当たり脆くも砕け散り打ちひしがれるしか無いのです。
当たり前の話ではあるのですが・・・。
この『I Love You』の主題は10代の未成年者の愛が突き当たる困難さでありその核心はその困難の原因である社会の共同条理という壁に打ちのめされる無力な未成年の純粋で絶望的な愛の姿とその社会に対する小さく儚い抗議の声だったのです。
『I Love You』は当時の未成年者が愛を貫く際の困難さを歌ったものだと漠然とは思っていましたが相手が女子中学生となるとその状況の難しさがより鮮明になります。
大人社会の最高権力に立つ当時の自民党の長老達は女子中学生の妊娠を伴う恋愛を容認してしまうと全国の中学生や高校生が一機に恋愛に走って夢中になり勉強が疎かになって高度経済社会が維持出来なくなるのを本気で恐れていたのでしょう。
これは当時の一般社会の大人達も同じ意識であり現在に至るまで基本的に変わりません。
つまらないことを心配すると嘆きたくもなりますが現実はそういう他愛ない為政者達の都合やそれに追随する諸々の社会の体制側の大人達の固定観念が未成年者の恋愛の障壁なのです。
こういう目に見えない何物かに未成年者の恋愛は引き裂かれ押し潰されてしまうのです。
限りなく美しい珠玉のバラードである『I Love You』はピュアなラブソングである故に逆に一見社会問題性は希薄に見えますが今回の解釈をすると尾崎豊さんの楽曲の例に漏れず社会的問題作、話題作であると言えます。
この『I Love You』は「愛とは何か?」「未成年の愛は何故許されないのか?」と10代の高校生シンガーソングライターがその鋭い感性を詩に託した社会批判を内包した諸刃の剣とも言える楽曲であり作者自身がその諸刃の剣で身を切る体験をしその傷ついた心情を歌にして社会に訴えた血の流れ出る様な生身のラブソングであることに改めて気づかされその想いに打ちのめされた様な気持ちにさせられました。
そしてこの『I Love You』はその感動を新たに呼び起こすだけで無く社会の矛盾を痛みを分かち合いながら聞き手に迫り未成年の恋愛が突き当たるその社会通念の理不尽さについて真剣に考えさせると同時に「魂を救うのか?救われたものだけを魂と呼ぶのか?」という哲学的な問いかけを聴く者に投げかける非常に奥の深いテーマを持った楽曲であると改めて思い知らされました。
※追記
結論から言えば社会がこの二人の魂を救済することは絶対ありません。社会は体制に適わぬ者は冷酷に排除します。体制に適う者しか救済しないのが社会の現実ならば社会は基本的に優生思想で成り立っていると言う事でしょう。この二人の魂を救うとすれば一神教の神だけです。魂を救うのはイエス・キリストだけです。自由意志と愛は神から出たものですから神の愛から出た行為を表出した魂は神によって救済されねばなりません。『ツイン・ピークス』の主人公ローラ・パーマーは死ぬ直前に神に救済されました。ローラ・パーマーは近親相姦の被害者であると同時にドラッグ中毒の背徳者でもありましたが作中では死ぬ直前に神に一心に救いを求めた事で救済されました。ましてこの二人は純粋な愛の表出者です。たとえ社会的には非行であったとしても。この二人も死ぬ直前にやはり神に救済されたのだろうか?尾崎豊さんはミッション系の高校出身と言うことでいくつかの作品の中でキリスト教の影響が垣間見られれるのでこの『I LOVE YOU』の歌詞の解釈を通じてそんな事も考えてみました。
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◾️10代のライブによる『I Love You』
◾️ダンスホール
「ダンスホール」歌詞
歌:尾崎豊
作詞:尾崎豊
作曲:尾崎豊
安いダンスホールはたくさんの人だかり
陽気な色と音楽と煙草の煙にまかれてた
ギュウギュウづめのダンスホール
しゃれた小さなステップ
はしゃいで踊りつづけてる おまえを見つけた
子猫のような奴でなまいきな奴
小粋なドラ猫ってとこだよ
おまえはずっと踊ったね
気どって水割り飲みほして
慣れた手つきで火をつける
気のきいた流行文句(はやりもんく)だけに
おまえは小さくうなづいた
次の水割り手にして
訳もないのに乾杯
こんなものよと微笑んだのは
たしかに つくり笑いさ
少し酔ったおまえは考えこんでいた
夢見る娘ってとこだよ
決して目覚めたくないんだろう
あたいグレはじめたのはほんの些細なことなの
彼がいかれていたし でも本当はあたいの性分ね
学校はやめたわ今は働いてるわ
長いスカートひきずってた のんびり気分じゃないわね
少し酔ったみたいねしゃべり過ぎてしまったわ
けど金がすべてじゃないなんて
きれいには言えないわ
夕べの口説き文句も忘れちまって
今夜もさがしに行くのかい
寂しい影落としながら
あくせくする毎日に疲れたんだね
俺の胸で眠るがいい
そうさおまえは孤独なダンサー
◾️米軍キャンプ
米軍キャンプ」歌詞
歌:尾崎豊
作詞:尾崎豊
作曲:尾崎豊
行き場のない街を 俺は一人ふらついてた
店も終わり 仲間も消えた 吸殻の道で
街頭の小さなノイズにさえ 心震えてた夜
初めて おまえの胸で 眠った
おまえはあんまり 上品に笑わなかった
人込みの中では 一言もしやべらなかった
求め合う夜は 傷をなめるように 愛を探しては
ニ人で毛布にくるまって 眠った
夜の街 小さな店で働く おまえのこと
朝が来て ネオンに解き放たれるまで
俺は待っていた
0h おまえはこの街を呪い
かたくなに夢を買い占め さまよってるだろう
0h こんな夜は 報われぬ愛に
失ったおまえを 抱きしめたい
昨夜は店の客にせがまれて 海へ行った
ケンカばかりしてて つまらなかったと笑う
知らない男の名前を おまえが口にする夜
涙ではらました男の りングが光ってた
米軍キャンプ跡の崩れかけた工場
凍りつく闇にとけ 震えてる車の中
力なく伸ばした手で抱きつく おまえの髪を
撫でると 放さないでとつぶやき しがみついた
時には二人の生活が 夢さえ育んでいた
大切な物を 引き裂く何かに
ニ人が気付くまで
0h おまえは この街を呪い
かたくなに夢を買い占め さまよってるだろう
0h こんな夜は 報われぬ愛に
失ったおまえを 抱きしめたい
【海外の反応】尾崎豊16歳 オーディション時の歌を初めて聴く
尾崎豊 - I love you 】「感情を表現する天才だ!」アメリカ人、伝説ライブで男泣き!【歌うまアメリカ人の反応】