朝日新聞と河北新報によると、感染症研究者らが新型コロナが空気感染で広がることを前提に対策をとるべきだと提言した。https://www.asahi.com/articles/ASP8W6KSKP8WULBJ00H.html &https://kahoku.news/articles/20210827khn000045.html

 

河北新報の記事を引用すると:

声明では「人流があっても実効性のある対策を取れば、必ずしも感染は広がらない」と指摘。最新の知見では空気感染が主因と考えられるとして、ウイルスの吸入・排出を抑える不織布マスク着用の制度化や、ウイルス粒子濃度を下げる空気清浄機などの活用を提案した。

 

オンラインによる記者会見で、世話人の本堂毅東北大大学院理学研究科准教授(科学技術社会論)は「コロナ対策は種々の専門領域にまたがるが、十分には政策決定に生かされていない」と、医学偏重の対策からの転換を訴えた。

 

この件、新型コロナが世界に広がろうとしている昨年2月に、「新型肺炎のパンデミックは短期終息しない可能性が高い(追補あり)」というタイトルの記事を本ブログに書いた。そこに“中国保険部が、このウイルス肺炎はエアロゾル感染で広がると発表した”とのテレビ放送を紹介している。

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12574178074.html (補足1)

 

その知見が、新型コロナ肺炎に一年半も国民が苦しんだ後、今頃緊急提言として出さなけらばならないことに、この国の惨めな政治情況を感じる。自己保身だけに関心のある政争家と狭い枠の中だけで働く役人では、ワクチン接種など直接的な対策しか思い浮かばないのだろう。更に、まともな学者たちの意見も聞かない。それらを政治の表に出すシステムも、この国は持っていないのである。

 

通常の会話や歌声では、大粒な唾は飛ばないが、コロイド粒子レベルの唾の飛散はある。特に熱い議論や熱唱は、多くの感染源を周囲にばら撒く。つまり、カラオケやライブハウスなどは相当危険だが、黙って食べる分には、飲食店を開店することには問題がない。(補足2)

 

デルタ型が強い感染力を持つのは、恐らくエアロゾルとなったのちの活性維持の時間が長いことが原因だろう。冬に向かってのデルタ株対策として、本堂毅東北大准教授らの上記提言は重要である。

 

2)エアロゾル感染病のスーパースプレッダー

 

結核などの空気感染では、菌を含んだツバの小粒子が空中で大部分の水分を失ったあとも、飛沫核となって浮遊し、エアロゾルとなり感染源になる。新型コロナのエアロゾル感染でも、ミクロンサイズ以下の唾液の小粒子が空気中を漂うエアロゾルを作る点で同じである。空気感染と区別して、エアロゾル感染なる言葉を新たに定義する必要はないと思う。

 

ミクロンサイズ以下の唾液のエアロゾル粒子は、湿度が100%でなければ、空中で短時間に大部分の水分を失う。もし完全に乾燥すれば、コロナウイルスも破壊される。ただ、発声や咳などで吐き出された微粒子中に粘膜成分が含まれる場合、それは水分を保持する力が強く(補足3)、一定の水分を保持し細菌やウイルスを守るだろう。

 

全くの推測だが、スーパースプレッダーと呼ばれる感染者は、放出するウイルスの量が他と比較して相当多いか、或は会話やカラオケで歌う際、恐らくこの粘膜成分を多く含む唾液を微粒子(つまりエアロゾル粒子)として吐き出すのだろう。(補足4)

 

エアロゾル感染では、患者が居た(或は居る)室内で、同じ空気を吸っただけでも感染する。患者が去ってから一定時間経過すれば、微粒子が水分を失うことでその感染力は、失われるだろう。このエアロゾル感染を防ぐには、一つは性能の高いマスクを4辺からの漏れを無くした形で着用することであり、もう一つは、出来れば部屋の片隅ではなく天井部から排気するタイプの強力な換気システムを設けることだろう。

 

 

補足:

 

1)その後何度もこのエアロゾル感染の危険性を記事に書いてきた。昨年の628日には、あのアクリル板の仕切りやアクリル製のつばき避けが、感染防止には殆ど無力だろうことも書いた。”新型コロナ肺炎流行の季節因子とファクターXについて“ ここでは「ファクターXは、日本人は大声を出さないことだ」とエアロゾル感染からファクターXを推測した。 https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12607372519.html  

その他に、最近ファクターXとして、日本人の60%が持つHLA-A24細胞免疫である可能性を東大研究コンソーシアムG2Pの研究が提案した。

 

2)昨年6月の記事、“新型コロナ対策としてカラオケやライブハウスを遠分禁止すべき”を参照

https://ameblo.jp/polymorph86/entry-12606624971.html

 

3)粘液成分は多くの水酸基(OH基)を持ち、所謂水素結合で水分子(HOH)と強く結合する。この水分がコロナウイルスの活性を一定時間保持させる可能性がある。

 

4)咽喉部に炎症がある人は、新型コロナに感染した場合、このスーパースプレッダーになる可能性があると私は思う。

(以上)