30日に十二指腸乳頭部がんで亡くなった日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の代表委員、谷口稜曄さん(88)は癒えることのない傷を負いながら核兵器廃絶を訴え続けてきた。時事通信の配信したニュースである。
 
194589日、16歳だった谷口さんは郵便配達の途中、爆心地から18キロの長崎市住吉町で被爆した。背中一面に大やけどを負い、生死の境をさまよった。2010年に米ニューヨークで開かれた核拡散防止条約(NPT)の再検討会議で、被爆者代表として「核兵器は人間と共存できない」と訴えた。(3019時のNHKニュース他)
 
上記時事通信の記事には谷口さんの言葉:「アメリカではなく、核兵器が憎い。二度と被爆者を生まないために運動してきた」が引用されている。核兵器で一瞬の内に数万人を焼き殺す爆弾を同じ人間対して使うことを決断する指導者が、この世界にいるということがどうしても信じられないのだろう。
 
しかし、核兵器は日本人が憎くて、天から落ちてきたのではない。落としたのは紛れもなく人間なのだ。勿論、アメリカを憎むのは何の解決にもならないし、現在のアメリカ人の半数以上も核兵器の日本への使用を正しいとは言わないだろう。しかし、戦争を早期に終わらせる為に正しかったという人も大勢いることも事実である。
 
日本人ほど論理的思考が出来ない民族はいない。その理由は日本語と日本文化以外に考えられない。日本文化は、根っからの性善説である。世界で恐らく例外的だろう。例外的なため、日本の性善説は決して理解されないだろう。
 
17条憲法の第一条に「和を以て尊しと為し、さからうことなきを宗とせよ。人みな党あり、また悟れるものは少し」と書かれている。人々は真理を知らないで、異る主張をしグループに分かれている。だから争うのは得策ではないと説いている。しかし、一神教の文化圏の人たち、つまり世界の大半は、異る主張の者たちを抹殺してしまえば問題は解決すると考える傾向があるのだ。
 
核拡散防止条約は単に核兵器保持国のエゴイズムを裏書きするための条約である。そうではなくまともな条約なら、核保持国の核兵器保持の特権に等価な重い責任が無ければならない。つまり、北朝鮮への核兵器拡散を防止する責任があるのだ。しかし、それはできないだろうし、そのことはNPTは欺瞞的条約であることの証明となるだろう。
 
日本国民一般も、世界標準は性悪説と力の論理、或いは、ルトワックの言う「戦争にチャンスを与えよ」が国際政治の原理であると理解すべきである。