某社オセアニア通貨建て債券の安全性や利点を考えた。オーストラリアとかニュージーランドは、気候も良く国土/人口比も大きく、将来性のある国であると思う。ただ、国の将来性とある会社がその国の通貨建てで出している債権の有利さとは直接関係はない。会社が発行している債券であるから、その会社の信用が第一である。また、中期的な為替の動向の見通しも大事である。それらの点について、素人ながらすこし考えてみた。
1)最近、東京T証券という会社が仲介している、トヨタファイナンスオランダ(Toyota Finance Netherland;TFN社)の豪ドル建債権やニュージーランドドル建債権を考えることになった。数日前に、その証券会社の人と電話する機会があったが、素人相手に自分のペースで売っているという印象が強かった。
TFN社という金融会社は、トヨタ自動車の関連会社である。おそらく、内外のトヨタ関連金融会社の総括を業務にする(トヨタ自動車の完全子会社である)トヨタファイナンシャルサービス株式会社(TFS社)の子会社だろう。資本金が、僅か91万ユーロ弱(日本円で、1億円程度)の小さな会社である(補足1)。従って、一般顧客はTFN社の貸借対照表など財務三表にはアクセスできず、その経営状態など知る由もない。
その債権を買っている顧客に「あなたは、オランダの証券会社が豪ドル建て債権を日本で売るのを不思議に思いませんか?」という質問をすれば、「もちろん、不思議です」と答えるだろう。しかし、自分が素人であり、それを勧める証券会社の人はプロである。しかも、トヨタの関連会社なら間違いないだろうと思ってしまうだろう(補足2)。
証券会社の人は、AA-という米国ムーディーズとかSPとかいう会社のTFN社などへの高い格つけや、「利息の高い確かな債券」などの力つよい説明をする。しかし、あの金融危機の際にリーマンブラザーズが売り出していたのは、危なっかしい名前のサブプライムローンである。破綻のすこし前まで米国の格付け会社らは、高い格つけをおこなっていた。http://subp.nf4hou.com/warui/kakuzuke.html
TFN社は株式会社であるから、その振出した債権は会社が潰れれば、紙切れとなる。株式会社は有限責任の法人である。資本金一億円弱の会社を潰すことは容易い。もちろんトヨタの看板に傷がつくだろうが、土壇場では親会社は子会社を見捨てるし、孫会社なら尚更のことである。潰れても、トヨタ本社から出向しているTFN社関係者は逃げることができるだろう。格つけ会社も痛くも痒くもない(補足3)。しかし、顧客は逃げることはできない。自分は救命胴衣をつけ客は普段着で、急流下りの筏の船頭をする様なものだ。
2)豪ドル債権に投資する唯一のメリットは利息が高いことである。現在でも3%近い利息がつくようだ。しかし、美味しい話にはリスクが付きものである。そのリスクの方が場合によっては大きいのではないかと思う。
一つは、証券会社も説明する為替リスクである。為替リスクは発展途上国の債権や外貨預金などの場合特に大きいが、先進国間ではそれよりも小さい。しかし、豪ドルの対円レートはこの10年間で、55円から105円ほどの間で激しく上下しており、為替リスクは決して小さくない。
もちろん、状況により上下に触れて平均値が変わらないのなら、豪ドルから円への切り替えの時期を選べば良い。しかし、為替が3%以上平均として一方向に動く場合、高い利息を打ち消し外貨建債権の大きなメリットが相殺され、元本無保証の外貨定期預金のようになるだろう。
そこで、為替が今後、平均してどちらに動くか少し考えてみた。関係のあるデータとして先ず物価を考えた。

上図は日本とオーストラリアのこの35年ほどの物価指数である。日本の物価はこの間に30%弱の増加しかないが、オーストラリアの物価はこの間に4倍近くなっている。また、最近の物価は留学生が紹介したサイトによると、日本の倍はあるのではという感じがするらしい。http://gate-world-information.com/?p=3052
例えば、コーラ500mLが4.8AU$で(400円弱)、ラーメン一杯が15.8 AU$(1200円ほど)である。為替レートは経済的付き合い:殆どは貿易する物品の取引価格、関係両国の国際収支などで、決まり国内物価とは直接関係しない(補足4)。だから、この物価の差が生じているのである。しかし、将来とも同じタイプの経済交流が続くとは限らない。つまり、オーストラリアの物価高は、豪ドルが潜在的に安くなる可能性を示していると考える。
経常収支で赤字が続けば、その国の通貨価値が下がるのは当然である。オーストラリアの経常収支は慢性的な赤字で、この30年間平均してGDPのマイナス4%程度で一定している。昨年も、5600億USドルの赤字であった。これは、経済規模の違いを考えると、日本でのおよそ200兆円以上の赤字に相当する。
豪ドルの経済成長は鉄鉱石などの工業用原材料の輸出に依存してきたので、世界の経済が傾けば、豪ドル安は今後も続くだろう。
とにかく、証券会社の人など信用するのは非常に危険であるというのが、この記事の結論である。
(素人の書いたメモですので、上記記事の当否の責任をとる能力はありません。批判等歓迎します。)
補足:
1)トヨタ自動車の関連資料から見ることができた。
2)勿論、この点大丈夫である確率は高い。しかし、何が起こるかわからない将来のしかも金融のことである。石橋を叩いても渡るか渡らないかのレベルの話である。
3)その会社だけの破綻なら、昨年度の純益だけでも1兆6000億円あるトヨタ自動車の実力を考えれば、2-3百億円程度なら損害保証をするだろうと思う。しかし、世界的な経済状況の変化が原因なら、トヨタはトヨタファイナンスオランダなんて、どこの会社だ?という顔で見殺しにするだろう。
4)日本が豪州で鉄鉱石を買う場合、米ドル換算で他国の鉄鉱石の値段も考えて交渉する。その価格と互いの国内物価とは直接関係はないので、このような物価の差が生じる。