文藝春秋の11月号には、日本再興の鍵は教育にありと題する特集がくまれている。その中で面白く読んだのは、中室牧子という方の「経済学が暴いた学力とお金の関係」という記事である。米国では現在、教育経済学という分野が大きく伸びているとのことで、その実態が具体例とともに紹介されている。
最初に、教育への投資は株式投資よりもリターンが多く、中でも、幼児教育に対する投資が効率的であるということが、米国で行われた壮大な実験とともに紹介されている。その結果の重要性とともに、そのような実験が可能な米国社会の柔軟性に驚く(補足1)。
米国では、地方政府や教育委員会が国の教育予算を獲得する際に、科学的根拠を示す必要があるという。そのために、教育経済学を習得した「教育エコノミスト」の就職口が増加しており、それを専攻する大学生が増加しているとのことである。
米国の教育政策は、政府や自治体が政策を計画(Plan)し、実施(Do)した政策を、大学の研究者や調査機関が第三者評価(Check)し、それを次の政策につなげる(Action)というPDCAサイクルとして、明確な役割分担と伴に行われているということである。
一方、日本では政策のプランニングも評価も同じ政府や自治体が行っているので、非効率であると、ゆとり教育の廃止などを例に挙げて指摘している。この日本の政策の非効率性は、教育に限らずあらゆる分野で言えることではないだろうか。
上記PDCAサイクルを明確な役割分担と伴に行うのは、あらゆる継続性のある政策に適用されるべきである。教育政策では実験教育経済学は米国にまかせて、日本はその成果を日本社会と米国社会の違いを考慮しつつ取り入れて、PDCAサイクルに乗せれば良いと思う。
補足:
1)低所得のアフリカ系米国人の子供を対象に行って実験である。その子供たちや両親にとって、実験への協力が経済的にプラスになるのだから許されるのだが、日本では不可能である。