芥川賞の作品が掲載されている文芸春秋9月号を買ったので、両作品を読んだ。火花については別に感想文を書いた。良く出来た作品だと思った。特に、社会の際にいきるが真ん中に引き返す主人公と、その際に張り付く様に生きる先輩の対比が面白いと思った。
 
一方のスクラップ・アンド・ビルドには何の共感も覚えなかった。趣味の悪い性的描写(注釈1)も何の為なのかわからない。祖父の面倒を見る孫息子の人格が、1人の人間として実在しうるという感じがしない(注釈2)。祖父の描写も面白くなかった(注釈3)。
 
スクラップ・アンド・ビルドは自分の人生に於けるのと、人間の世代間における(肉体)のとの二通りの意味を持たせているのだろう。
 
選評を見ても、高樹のぶ子と言う人が正面から評価しているが、高樹氏が面白いと思う所も面白くない。まあ、素人には解らないプロのみが知る面白さがあるのかもしれない。ただ、介護の現実を知るのには、良い材料かもしれない。
 
注釈:
1)体作り(bodybuilding)の一つだと言う言い訳はバカバカしい。
2)老人から運動の機会を奪って早く楽に死ねる様にするという冷酷な計算とその為に行なう表面的親切行為は、現実的且つ緻密でない人格では両立しない。
3)老人の”早う死にたい”が”もっと楽に長生きしたい”の別表現であることは、常識だ。