日米中の関係:
 オバマ大統領の訪問とTPP交渉の同時進行は、経済関係における米国の利益抜きに日米安保もあり得ないことを示している。
 オバマ大統領は、日米の同盟は太平洋における米国の安全保障上も重要であると発言して、尖閣諸島の名前を明言する形で日米安保条約の重要性に言及した。しかし、米国の新聞フィナンシャルタイムズのネット版は、この同盟には見返りが無ければならない(注1)と指摘している。つまり、米中経済関係の大きさを考えれば、米国に経済的見返り抜きに日本や韓国の防衛にコミットするメリットがないということである。
 TPPに関しては、裁判でとんでもない判決(注2)が出る可能性のある米国とISD条項に合意することなど(注3)の危険性があるが、これは安全保障を考えて選択しなければならない問題かもしれない。今となっては、日本国は前門の虎に後門のオオカミ遺伝子を持った親分の状態に置かれている様に見える。ただ、被害者意識を持たなければ、TPPEUの前段階にあったEECの様なものと考えることも出来る。そのような場合、安全基準や裁判制度を含む社会制度も同じ方向を目指す必要があるのだから、そして、経済規模の差や片務協定的な日米安保を考えれば、日本の歩み寄りは米国のそれより大きくなるのは当然だろう。
 今まで、一人前の国になるという努力を怠って来た我国が、グローバル経済の中で生きて行く道を今探しているのである。その自覚を政府とともに国民も持たねばならないと思う。共同宣言を何とか出すべきである。出さなければ、オバマ大統領の尖閣諸島に言及した発言も霞の彼方に遠ざかるだろう。
 
注釈:
(1)              Asian allies need to give somethingbackと書かれている。
(2)               マクドナルドのコーヒーを膝にこぼしてやけどしたことで、何億円も賠償金をとった人が話題になったこともある。理由は、コーヒーの温度が高く、やけどの可能性について注意が十分されてなかったことである。
(3)                 「米国の安全基準を満たしていれば、米車を日本は受け入れる」というのが、豚肉の関税とともに、今回TPPが合意に至らなかった主な項目である。