国交回復と同時に、中国が尖閣諸島を日本の領土と認めることを期待したものの、合意が得られそうになかったので諦めたのは明らかです。そうでなければ、国民の尖閣への上陸を認めてこなかったことの説明が付きません。(言及する余地がない程、明確に日本固有の領土というのなら、上陸を認める筈です。また、鰹節工場があった時から現在までの間に日中戦争があったことを忘れてはなりません。)
従ってその時点で尖閣問題は、その島々がどちらに帰属するかという歴史文書の解釈論から、どちらが将来、力のある国家になるかという競争に移行したと考えるべきだと思います。その競争において、中国は国連の常任理事国という出発点での差はありましたが、完全に日本を追い越したのです。経済力は世界第二に、そして軍事力は核保有国になり、更に、国際的な地位もアフリカなど諸国との関係を深めるなど着実に戦略的に行動してきました。その間、日本は何をしたのでしょうか?この40年間、対米追従一辺倒で、日本が一人前の国家にすらなれなかったのです。
今更、中国は日本の固有の領土を奪おうとしていると、歴史文書を出して主張してみても、領土問題としては米国すら味方にはできていません。(軍事的に、日本国が中国と対立すれば安保条約に従って、日本に協力するとの声明はありますが。)この問題において、日本が出来る唯一の平和的戦略は、建造物を創ったり公務員が常駐しないということを態度だけで示し、日本の実効支配の維持を、貫くことだと思います。そして、中国に対してこれ以上強硬な態度にでれば、損をすると思わせるように、情報面と諜報面で努力するとともに、将来日本国が再度中国を凌駕する国際的大国になることに懸けるのです(無理でしょうが)。仮に中国が攻めて来れば、尖閣問題が日本の致命的問題と考えるのなら、戦争をすることで解決するしかありません。その場合局地戦争で終わるとしても、田中宇さんの分析では、その後の経済的対立の影響を含めて、日本の損害は中国の損害よりも大きいということです。
国家間の問題を、国内での紛争解決プロセスを模して、対策を考えるのは(さすがにそんなことは無いと思いたいのですが)馬鹿げています。要するに、損得と広い意味での力です。