12月に、10年以上も前に別れた元旦那から連絡が来て久々に会うと、今度旅行に行こうと誘われたが返事はしていない。
彼からは再び、
映画でも観ないかと誘いが来た。
相談所の方は、
今月いっぱい仕事が忙しいと嘘をつき、会社経営者との見合いを延期して貰っておるから、
どうせ来月まで活動は出来ない。
では、TOHOシネマで私が映画を予約を致そうと提案すると元旦那が、
その後行きたい所はあるかと聞くので、パチスロでも行くかと言うと直ぐ固まるので、冗談だと言い直す。
それで、賛否両論に行ってみたいのだが、いつも予約が取れぬのだと言うと、
じゃあ電話して見るよと言う。
それから程なくして、
21時からだけど、賛否両論に予約が取れた
と連絡が来る。
勿論喜んだのだが、
時間が経つ毎に、徐々に昔を思い出す。
元旦那とまだ付き合い初めだった当時、
外食に旅行にと、彼は何処にだって一緒に行ってくれた。
車で私を自宅まで送り迎えしてくれたし、
誕生日には欲しいバッグを買ってくれた。
彼はとても無口で大人しかったが、私にとっては白馬の王子であった。
しかしだ、
結婚した後はすっかり書斎に引きこもり、
外食も旅行も会話する事すら面倒くさがり仕舞いには、ドライブには行きたくない、車が無ければ行かなくて済むから、要らないだろうと売り払われた。
では、この10数年で彼は変わったのか。
ムフウと私は腕を組む。
人間は、いや、
男はそうそう変わらないと思うのだが、
どうだろう。
当日は渋谷の映画館で待ち合わせ、
観終わると2人でお茶などしてその後タクシーで賛否両論に行く。
カウンターに並び、美味い食事と酒を飲むと
あんなに無口で大人しかった男も、
今では日常会話に困らぬ程会話が出来るようになっておる。
男もしばらく会わなければ変わるのか、
それとも当時と比べて私が変わったのか。
まあ我儘であったしなと遠い目をする。
賛否両論を出ると、
店から恵比寿まで酔い醒ましも兼ねて歩く。
そして私の自宅マンションの下に到着すると、
いい所に住んでるね、と彼が見上げる。
私が、ではまたなと手を軽く振ると、
元旦那は、今日は泊まる帰りたくないと言う。
私は笑って、
付き合っている男以外は家に入れないのだ
と彼に言うと、
もはや今まで見た事が無いくらいに、死ぬ程苦しい顔をして何か考え込んでおる。
付き合っている男しか家に入れない、とか、
付き合っている男の部屋にしか入らない、は
デート中直ぐに身体の関係にならない為の常套句だ、今の世の中猿のように皆直ぐに寝すぎる。
まあ、付き合っても未来は無いしな
とか思うておると元旦那はぐっと顔をあげ、
分かったもう一度付き合ってみよう、
と、険しい顔でそう言った。