結婚相談所から申し込んだ11才歳上力石徹に似た方とは既に交際終了とされたが、
本日は日帰り旅行で熱海におる。
帰りの列車の切符は力石に買わせて、
定刻になるまでに晩飯をラスカ熱海で取ろうと決める。
しかしだ、力石の買った切符は自由席で、
私は内心こっそり驚いた。
私は、特急列車といったら、
指定席かグリーン席しか買わない。
席が確保されていないと何か不安になるタイプだ。
値段も千円位しか違わないのだが、力石は、
平日のこの時間だから、自由席で大丈夫だと言うから、ああ成程確かにそうだと感心する。
婚活していて時に思うことは、
男性の方が節約が上手い者が多いと言う事だ。
ああ、世間では一般的にケチと言う。
もちろん、私もマネーコンサルに年一で相談しつつ、将来に備え手堅い資産運用をしてはおる。
だって2000万円問題の時に、個人で運用しろと言われたであろう、
頑固にしないでいる理由は無い。
しかし、節約と言う言葉は基本的に知らない。
だから、散財する男は絶対に選びたくないし、
もしかしたら、結婚したら、財布は旦那に握ってもらう方が、無駄な出費は控える事が出来るのかも知れぬななどと考える。
まあ考えるだけでする気は無いが。
ラスカは、熱海駅に直結しておるショッピングセンターで、
ここの広々としたカフェのパンも美味いのだが、晩飯は無難な和食屋に入り、ようやくほっと一息入れる。
そして私は、
金遣いの荒い女と思われないように、
質素なめざしの干物定食を頼み、
酒豪などとは間違っても思われないよう、
頼んだビールは半分残して力石にあげる。
疲れている時私は、こういった理性が全て吹っ飛び、一番高い海鮮丼と共に、
黒龍または獺祭の日本酒は無いのか、とか店の者に聞いたりするし、店の支払いでカードが使えなければ不機嫌になるから始末に悪い。
この婚活期間だけは、常に気を付けていかなければ。
帰りの汽車は力石の言う通りあっさり座れて、
私は嬉しくなってニコニコと、
疲れたが楽しかったなと力石に言う。
すると力石は、
自分の左腕を私の頭の後ろにいきなり回すと、
そのまま包み込むようにして私の唇を塞ぐ。
唇はすぐに離れたが、私が驚いておるとまた近付き、今度は深く口付けをされる。
少し荒々しいが、甘くてそれが永遠に続いて、もし座っていなければ、私の腰はそのまま溶けて崩れてしまったに違いない。
列車は定刻になるとゆっくり走り出し、
熱海駅は段々と暗闇に遠ざかる。