結婚相談所から申し込んだ11才歳上力石徹に似た方とは既に交際終了とされたが、

本日は日帰り旅行で熱海におり、道に迷うておる最中。














12月であるから山の夜道は寒くとても暗い。




車もろくに通らず、

どこまで歩けば良いのかと途方に暮れるが、

力石はあと少しだ、と何の根拠も無く言う。









それで、私は夜のライトアップされたサンビーチを歩きたかったなとか考える。


その近くで2人夜景を見ながら露天風呂など入れたらロマンチックであったのに、

と妄想が止まらない。







うねうねと1時間以上歩いただろうか、

暗いし心細いからもっと歩いたようにも感じる。


やがて車通りが多くなり、

左手を見ると伊豆山神社の看板が見えてハッとする。

このまま熱海駅まで歩かされたらたまったものではない。

※しかし地図を見ると、来宮神社から熱海駅を通り過ぎて伊豆山神社がある。もはやどう歩いたのかさえ分からない。








タクシーの利用を提案すると、何か、金遣いの荒い女であるように思われるので、今まではなるべく遠慮していたが、


もう、絶対乗ろうと心に決めて、

私が払うからタクシーに乗ろう。

と宣言をした上で真っ直ぐビシっと手を挙げると、丁度通りかかったタクシーが止まりほっとする。





運転手に、熱海駅までと告げ走り出した後で、

ここから熱海駅まで歩いたら結構距離はあるのかと聞くと、

まあ、かなりありますねと言われる。

力石は知らぬ顔をしておる。


熱海駅で和食で美味い店はあるかと問うと、

こばやしという屋号の店が美味いと言うから、

晩飯はそこに行こうと固く誓う。





それで、タクシーを降りて直ぐ、

和食処こばやしを見付けて、小さなビルのエレベーターに乗ると、人気がある為店内は既に満席で、待っておるカップルが他にも1組いる。











エレベーターの前の椅子で座って待つが、

今度は力石がジリジリし出して、他の店に行こうとか言い出す。




山道を散々歩かせておきながら、

私が食べたい食事も食べさせずに何なのだこの男は、と腹も立つが、

きっと値段が高そうだから嫌になったのだろうと勝手に決めつけ、また別の男と来ればいいさと、こばやしを後にする。





そして熱海駅に向かう途中、まる天を見付け、

美味いから土産に買って帰ろうと決める。


しかし私は、一人黙って買うのは嫌なので、

力石も食べるか、と一応尋ねる。



美味いなら食べたい、と遠慮も無く言うから、

不味いから止めとけ、と嘘もつけず、

さつま揚げのセットを2つ買い、1つを力石に渡す、ここは食べ歩きが有名であるが、油が優しくてほんのり甘くてとても美味い。





お会計の際、日本の美しき文化であるあの、

私が払うぞ、いいやここは私が、

みたいなやり取りは一切無いから寂しい限りだ。







そういえばこの男は、良く母親と出掛けると言うておった。




外食などする時、

力石が車の運転をする代わりに母親が食事などの金を払うのだと言うておったから、

すっかりその習慣が染み付いておるのでは無いか。


そして、そのような男は年齢が高い程、多いような気がする。

まあ世間ではそれを親孝行と呼ぶのであるが。