結婚相談所から申し込んだ11才歳上力石徹に似た方とは既に交際終了とされたが、本日は日帰り旅行で熱海におる。
ホテルのロビーで力石とソファに座り待っておると、来宮駅を経由するホテルの送迎バスの乗車時間となる。
2人そ知らぬ顔でバスに乗るが、
そのマイクロバスと来たら、今どきタイの奥地に行ったって見ない程のボロさ加減だ。
遠くから見た際は、動物園を走るシマウマをかたどったバスかと思っていたが、近付くと、
白い車体に大量のサビが縦に入っただけだと分かる。
まあ無料だから仕方あるまい。
車内は年寄りだけが詰めて座る、
一瞬ここは天国かと考えた。
座席に座ると、普通に生きておったら嗅ぐことの無い、タバコを虐待した様な香りがするから、
12月だというのに窓を引いて全開にする。
そのうち運転手の小さな親父が現れて、
バスにようやくエンジンをかける。
バタバタと床下から恐ろしい音がした上に、
全身をくまなく小刻みに揺らす振動に包まれ、
あ〜と発声すると、地球外生物ような波長の声になる、ワレワレハ宇宙人ダ。
宇宙人の声で2人、
このバスで来宮駅から、来宮神社に行こうと決める。
大楠を拝むと17時にはライトアップされるからそれを見ようと決めたのだ、
神社でライトアップとは、幻想的で何とも素敵では無いか。
バスは動き出してすぐに解体するかと思うたが、
山道も無事に走り、我々は来宮駅を少し過ぎたあたりのバス停で下りる。
ブラブラ歩いて神社に到着すると、
有難い大楠を歩き拝み、記念写真を撮る。
しかし、
髪の長い女がそこでずっと拝んでいる為、
力石も私も、お互いを撮り合った写真は図らずともその髪の長い女との2ショット写真となる、
無念。
散策しておるうちに陽は落ち、
木々の合間をライトが照らす。
力石が、これはとても形が良いと拾って渡してくれた落ち葉を、
私は大切に持ち帰ろうと、
コートのポケットにそっと仕舞う。