結婚相談所から申し込まれた7才歳上坂東忠信に似た方と仮交際となる。
水曜日になり、坂東忠信から連絡が来て新宿のフルーツパーラー高野の前での待ち合わせを約束している。
私は基本的に引きこもりであるから、
新宿に全然詳しくない。
新宿に到着してから高野をヤホーでググり、
検索結果より駅の1番近くであろうとその場所へ急ぎ目で向かう。
そこはショーケースに入ったケーキが飾ってあり、持ち帰り用として販売しておるから、購買する客足が途切れる事は無い。
しかし定刻間際でソワソワし出す、
坂東忠信が現れない。
5分過ぎ、10分過ぎた所で取り敢えず、
高野の前で鼻歌を歌いながら待っておる、
とメッセージを投げてみると相手から、
私もフルーツパーラーの前です。
とメッセージが来てこれは高野違いであるなと青ざめる。
向こうが指定したのは高級な高野の方だ。
坂東忠信はその足で私の元へ迎えに来て、
ここにも高野があったとはと少しだけイライラを抑えた様子で苦笑いをしておるから、
実は私は、目黒区と港区以外は全く詳しく無いのだと、
よく考えれば何処ぞのお嬢かと言う様な言い訳を致すこの気の強さ、何とかならないものなのか。
坂東忠信が予約してくれた店はスペイン料理の店で、
そしてカウンター席に通される。
お見合いに挑む男性は皆、話しやすい男女の席という物をきちんと勉強されておるのか。
しかし店は注文していない料理を運んでくるし、頼んだシャンパンをカウンター越しに倒して、グラスは割れて坂東忠信のスラックスを汚す。
そんな無礼三昧であるから坂東忠信は文句のひとつも言いたそうであるが、私がいる手前何も言えずに、
大丈夫ですと口では言うが、堪えるようなヒリヒリした空気が漂う。
言うておくがこのようなヒリヒリ感、私は嫌いでは無い。
世の中、何もされても文句を言わないのがマナーだと言う男と、問題があれば言ってしかりだと言う男に別れると思う。
店の店員にギャーギャー言う男もどうかと思うが、
長く付き合って行くと、クレームひとつ言えない男も頼りがいは無いと思うのは私の我儘であるのか。