結婚相談所から申し込んだ11歳歳上の力石徹に似た方と仮交際1ヶ月が過ぎて力石の自宅に行き、テレビを観ながら部屋で寛ぐ。
気付けば力石の腕枕でテレビを観ておる自分に驚く、いつの間にか彼の腕が頭の下にある。
ラグビーをやっていた者は体格が常人とは異なる気がする。肩幅であったり、胸筋であったりが人より大きく厚いようだ。そして二の腕にも安定感がある。
痩せている者の腕を枕にすると、骨の上を筋だけゴリっとやりそうで気を使うが、力石の腕はなんかたわわに実っておる。
このまま猫のように丸くなって寝てしまいたい。
キスしときますか、と力石が言う。
私は力石の顔を見上げてしばらく見つめた後、エイヤッと掛け声を自身にかけながら、カレの唇にチュッとした。
衝突事故みたいなキスだし、私はとても恥ずかしくなり、
こんな時間だしそろそろお暇いたす、と言うと彼は、
それだけかと残念そうだが特に無理強いする事も無く、私は、キスして本当に良かったのかと心配になる。
途中まで車で送ると言う彼と玄関まで行くと、
寝室は見ておかなくて良いのかと聞かれ、
そこまで行ったら冗談では済まなくなりそうなので、嫌結構であると丁重に断る。
でも、彼と寝たらどんな感じなのかと
妄想しそうにもなる。
大人になったって、うっかりしたら
誘惑に勝てなくなりそうな時もある。
日比谷線のある駅まで、
電気自動車でのんびり送ってもらう。
力石は、
かっぱ橋に遊びに行って本格的な鍋を買う女性は初めてだと笑う。
かっぱ橋デートは彼の定番ルートのようだ。ふと部屋のクッションを買った女を思い出す、彼女とも行ったのであろうか。
彼は、電気自動車をインターネットで買ったと言うておったから、車をネットで購入する者も珍しいのでは無いかと思うが、今時は普通なのか。
力石が経験したネットショッピングの中で、1番高価な買い物だったと言うておった。
車から下りると私は力石に手を振る。
ビニール袋に入った鍋がユラユラと腕から揺れる。
鍋を持って電車に乗る事に抵抗は無いが、また家まで送ってはくれないのだなと思うのは我儘か。
しかし力石はキスする事に拘っていたが、キスって大事な事であろうか。
結婚相談所に入ったのだから結婚したいのだろう、その相手となる筈の私を何故不安にさせるのだろう。