結婚相談所から申し込んだ11歳歳上の力石徹に似た方と結婚前提のお付き合いとなり、川越にドライブに行く。





昼はカウンターの目の前で肉を焼いてくれる店を予約しており、車でも予約に間に合う時間を力石に逆算してもらった筈であるのだが、

電気自動車のパワー不足なのか力石の気合い不足なのか、到着の時間が大幅に遅れそうなので、店に電話を入れて時間をずらしてもらう。



正直ラストオーダーの時間を割込みそうだから、店に対してこちらは平謝りなのだが、力石は私が電話を切った後も知らぬ顔で調整のお礼を言う様子も無い。


考えてみればこの男からは、ありがとうもごめんねも聞いた覚えが無いから、もはや夫婦になったつもりでおるのか、

夫婦になるとどちらの言葉も中々言わなくなるものだから、これは心を許されておると捉えれば良いのか。



到着したら店にはほぼ客はいない、

いても後ろの数組が皆食い終わっておるから、

まあ静かで良いなとは言うてみたが、カウンターは音も無く静か過ぎる。



力石に、ビールでも飲めと勧められて、

それは良いなとオーダーするが、

力石自身は運転があるからお茶で良いと言う。


私の友人は、下戸の旦那最高と言うておったが、

下戸でも旦那でも無い者の前でビールを飲むこの居心地の悪さ、何となく美味くない。



それでデザートになった時に、

私は手洗いに行くついでに2人分の支払いをさっさと済ませた。店は私の希望であるし彼の運転技術へ敬意を込めての特別給付金である。


席に戻ると一口サイズのプリンが運ばれておるから、美味い美味いとさっさと食べて茶を飲むと力石が、

そんなにプリンが好きなのかと、自分のプリンを綺麗に半分だけ残して、これも食べろとあの氷室京介の声で言う。



少しの量であるし、己で食えと言いたい所だが、

力石の親切心を無にしては申し訳ないので、

息を止めて一気に食うと、力石は何故か満足気。


しかし冷静に考えれば、

数回会っただけのオッサンが残したプリンを、潔癖な私が鼻をつまんで食うておるのだ、こんなの有り得る話しでは無い。

早く婚活から卒業しなければ、もはや完全に病みそうだ。