結婚相談所から申し込んだ11歳歳上の力石徹に似た方と結婚前提のお付き合いとなり、ドライブに行く。
訳あって、小走りのような状態で車に駆け寄り、
助手席の扉を開けて中に乗り込む。
力石は、黒ずくめの格好でやぁと挨拶をしながら、
そんなに慌てなくても待ってるから大丈夫だと笑う。
彼の車は黒い電気自動車であり、
チラと見た限りデートに備えて洗車した様子は無い。
黒い服もユニクロのような質感であり、
あれは着る頻度が高くゴリゴリ洗濯するようであれば、気兼ねなく買い換えられる値段設定にしてあると思うのだが、力石は10年位着倒してそろそろ洋服の方が、許してくださいと泣き出しそうな様子。
伴侶のいない男などこんなものなのか。
しかし男がお洒落をしたらモテるのではと心配になるし、
このままでいた方が、他の意識高い系女子に絶対に嫌われるから知らぬ顔をする。
結婚したらせめて真新しいユニクロの服を着させたいとか妄想する、乙女心は複雑である。
それで車内で話している間にうっかり敬語を使ってしまった。
だって会うのはこれで5回目だ、
iMessageの往復回数だってほとんど同値だ、
力石は変な圧の高いオーラを出しておるし、デカいし
敬語にだってなるだろう。
元々少しハスキーがかった、何と言うかあれだ、あのBOOWYの氷室京介のような男性らしく良い声の彼で、そしてそういう声に完全に弱い私であるのだが、いきなり、
敬語使うなって言っただろう
とあの声で怒られる、この説明でイメージが湧くのかは謎だ。
私は黙る。
前回は黙っていたけど、敬語だと他人みたいで嫌なんだってメッセージ送ったよね、と言い、その後彼は怒りを引きずる訳でも無くケロリとしている。
私は、他人の定義とは何であるのかについて思いを馳せる。
力石の俺様ルールは、正直良く分からない。