結婚相談所から申し込んだ11歳歳上の力石徹に似た方とお見合いをする。
彼は私立高校から同大学を出ており、
その間はラグビー部で活躍をされていたようだ。
ラグビーのセンスもありガタイも良かった為大学に入ってすぐにレギュラー選手となる。
母方の実家は裕福でお婆には資産があった為、
孫である力石が高校生の頃にお婆と養子縁組をしてそれを受け継いだ。
そんな彼が若い頃モテた事は容易に想像出来る。
同年代より身長に恵まれ、学生の頃は当時流行っていたスポーツカーを乗り回していたと言うから顔も生活も派手だ。
格好良いな、その頃知り合いであったら、その車に一緒に箱乗りしたかったなと私が言うと力石は、
当時そんなヤンチャガールは居なかったとにべも無い。
私の年齢の頃には、黒くてデカいベンツに乗って大気汚染を招いていたと言うから、確かに燃費悪いのが似合いそうだなと笑う。
しかしそのような外車も、50歳で手放したと言う。
50歳で何があったか離婚して、今現在、それまでは考えもしなかった結婚相談所に登録しており、それには彼の兄の他界が少なからず影響しているのでは無いかと思う。
結婚相談所に生息する男は東大含めて国立大学が多い。
嫌、私の検索フィルターは大分制限がかかっておるので断言は出来ないが、有名私立大学は少ないように思える。
相談所で嫁を求める不器用な男は何か素敵だ。
私は歳上が好きだ。歳上の男の人生はいつでもドラマチックであり、逆に若者の発する言葉や人生の方が使い古したレコードのようだ、言うなれば私が昔経験し何度も聞いた事のある浪花節に思えるのだ。
まあつまり、私がそれだけの経験を積むような歳になったと言う事でもある。
1時間程で帝国ホテルの虎屋菓寮を出ると彼は、
今日は車で来ているのでここでと言って頭を下げる、一緒に箱乗りしますかなどと言うては来ない。
私は三越で買った共楽堂のひとつぶのマスカットを手土産として渡し、礼を言ってその場を離れる。
人の人生は興味深いが、
それを聞き消化するまでには結構時間がかかるものだ。
まだ日差しのキツい外に出ると、
消化不良を起こす前に別の喫茶店に寄ってから帰宅しようかなどと考える。