3ヶ月前に結婚相談所から申し込みがあり、その後交際終了にされたトム・クルーズから夜中にLINEが来る。
結局、翌日も朝からLINEが来て、
では明日の夜、近所で焼肉でも食べようかという話しになる。お互い近場に住んでおる。
結婚という縛りが無くなった今の方が、
何だか肩の力が抜けて会話もし易くなっており、彼は最終的にうんこのスタンプまで送ってくる程の気安さだ、
いや、これ、力抜き過ぎであろうが、まったく男は幾つになってもうんこだのガンダムなどで喜ぶおかしな生き物だ。
仕事から帰りシャワーで汗を流して、白いパーカーみたいなラフなワンピースに着替えサンダルでブラブラと外に出る。何だか楽しいからバッグをブンブン振ったりする。
日も暮れて来ておるがまだ夏の空気は暑くアスファルトの道は熱気を放っている。遠くでジーと鳴く蝉の声も、思えば聞く余裕など無かった気がする。
肩を組んで歩くカップルなど見ると羨ましいから、どうぞお幸せにと横目で見送る。
恵比寿のトラジで待ち合わせしており、
店の中に入るとお連れ様は2階ですと言われる。
階段を上がり、
見ればトム・クルーズがクーラーの効いた店内で1人、
オレンジジュースのストローをくわえて頬杖をつきボーっとしている。
小花柄の綿のシャツを着ており、喋らなければとても似合っており可愛い。
痩せたようであるな、と私が片手を挙げて声をかけると、
貴方に振られたせいだと彼は笑いながら言う。
こういう会話は面倒だから聞こえない振りをする。
焼肉を食べながらお互いにペラペラと雑談をする。
もっぱら彼が焼いてくれて私はビールを飲みながら食べるだけだ。
出会った時からこんな調子であったら、また違う関係も築けたのかも知れないが、まあ致し方ない、
人見知りするのはお互い様だったのかも知れない。
デートなら、
居心地が良いな、楽しかったなと思うウチに解散するのが次に繋げる為のセオリーだ。
しかしトム・クルーズが、
食後のデザートを食べに行こうと言うので、行こう行こうと言いながらアトレにある千疋屋に向かう。
まるで女友達と会っているみたいだ、楽しくて仕方無い。