結婚相談所で活動中であるが、
お見合いを1件控えるだけで何の取り柄も無い私。
相手からの申し込みは1ヶ月あたり5件あるか無いかまで減っており、何かと呼び出しのあった相談所からも声が掛からなくなって何となく寂しい。
まあそれはそうだ、
テニスだってチャンスボールを打ち返せない素人とはダブルスを組みたくなくなる。
相談所だって、ホイホイ放り込んだボールをあらぬ方向に打つ、または見送るヘタクソを相手になんかしたくないのだろう。
が、しかしたまには構ってくれといじけてブツブツ言いながら、せっかく来た申し込みに対して、誠に御免とお断りボタンを押す。
だって年収600万は、私より全く少ないのだ、
こんな私だって稼げるのだから、歳上の伴侶にはもう少し頑張って頂きたい、
贅沢を言える身分で無いのは百も承知だが、誰が何と言おうが、そこには数字が書かれておる。そんな年増に苦言を呈するならなぜ年収を載せるのだ、または年齢を載せるのだ、そして写真を載せるのだ。書かれてなければまた違う魅力を探せるかも知れぬ、
嫌だと思う人と会おうとすると、腰が立たなくなる程の脱力を感じるのだから、まずその対処方法を教えて欲しい、
その代わり、知らぬ男子にババアが嫌いと言われたって気にしない。
だって、年増は恐い。
頭が良くすぐに怒る、話が長い、正論をぶち込む、思い通りにならないと急に泣いたりもする。
しかしそんな熱いババア程、
情が深く弱い者にとことん優しい。一度心を許した者の為には命を捨てる覚悟すら持つ。
まあそんな面倒な女より、
私だって話すなら若い女子の方が良いのであるから、
日本男子は若い姫が好きに決まっておる。
頑固を通せば自分に迷惑をかけるが、
他の誰にも迷惑はかけておらぬ。
仕事を終えて疲れて帰宅し、今日も独りベッドに入る。
今週末にはお見合いがあるから、まあその結果次第で他にドシンと申し込もう、などと考えておる矢先に携帯がブンと鳴り、見ればトム・クルーズから元気ですかとLINEが来る。
私は心臓を掴まれたみたくハッとする、
LINEを開くのも躊躇われる。俺通信は無視すべきであるがあんな突然の終わり方でブロックすら出来なかった。
忘れた気になってはいたが、まだ私の心の端っこは何処か、彼に掴まれたままでいる。
枕に顔を埋めてウーンと何かを堪える、
しかしまた携帯が鳴るからどうしても急いでそれを見る。
そこには、
ニコライ・バーグマンのブリザーブドフラワーの写真、
そして、まだ綺麗ですとのメッセージ。
私があげたボックスフラワーがまだ瑞々しく生花のように咲き誇っているから、彼も私を思い出したのであろうか。