結婚相談所から申し込みのあった3歳年上の西島秀俊に似ておる男性はバーで飲み過ぎて田代まさしになっておる。
完全に酩酊しておる田代まさしの手を取り背を押しながらバーから地上への階段を上る。ヨロヨロのその姿は完全にお爺だ、颯爽と現れた数時間前の姿は見る影も無い。
私はこの時間でもまだ電車があるが、彼はタクシーで帰ると言うから、彼の乗車を見送ろうと致したのだが、
西島秀俊は酔うておるのに地下鉄の入口まで自分が見送ると言い張る。
歩道に面した地下鉄の入口に入って手を振る私、
ここから地下鉄へと下りる階段は果てしなく長く続いておる。
彼はフラフラであるから、階段の手すりに捕まって何とか立っておる状態で、もう此処で良いぞと言うのだが、
最後まで見送らせて下さいと彼は叫ぶ。
声がでかいぞ恥ずかしい。
数段下りて振り返ると、彼はまだいる。
踊り場まで下りて振り返るとまだいる。
階段を下りきって振り返ると彼は大声で
今日はありがとう気をつけてと叫ぶ。
しばらく歩き進めてからフイに私は、
西島秀俊と一緒にタクシーに乗ろうと思った、
意地悪をして最後まであんなに酔わせたのは私だから、
途中まで車に乗って付いていてあげなければと急に思ったのだ。
踵を返すと、階段を駆け上る。
高く細いヒールが私をよろけさせる。
息も絶え絶えで上り切って辺りを見渡すがもう、西島秀俊の姿は何処にも無い。
結局は独り、電車の中で、酔いも冷めて冷静になる。
お互い素敵な格好をしてお洒落な場所での高価な食事も、
それも良いのであるのだが、そもそも、
夫婦とは一体何だろう。
生涯共に生きる相棒を見付けたいと思って居るのだが、
キラキラする何かとは少し違う気がする。
私は、どんな人の側に居たいと思っているのであろう。