大手結婚相談所から申し込みのあった

1歳年下笑顔がトム・クルーズ似の年収8000万の彼とは昼から映画館デートで現在ウェスティンでお茶中である。


彼に、結婚を前提にお付き合いして頂けますかと言われて息が止まる。

ゴマ様ついにやりました、失敗続きの私であったが感情の抑え方、魅力的でいる方法、男性を怖がらせる事も無く、下界の誘惑にも負けずに結婚に向けゴマ様の幸運の白鳥を携帯の壁紙にしながら、真っ直ぐ生きると言う事を今まで学んで来たのです。


私はトム・クルーズを真っ直ぐ見ると頷きながら、はい、こちらこそよろしくお願いします、と答えた。思い入れのあるこのウェスティンは2人だけの時を刻んでおり私にとってこの告白は意外すぎてそして幸せな瞬間であった。


ウェスティンを出るとトム・クルーズは私を家まで送ると言うから近いし悪いから大丈夫であると言うが、近くなら別に良いでしょうと言われてまあそうかと送ってもらう事にする。

並んでゆっくり歩くがすぐにマンションに着いてしまうのが残念だ。しかしマンションの下まで来ると今度はトム・クルーズが、部屋まで行っても良いですかと言うから私は驚いて、それは駄目だと断ると、貴方は綺麗好きだから部屋は綺麗なはずでしょうと言うて来る。勿論万が一に備えて部屋は綺麗にしては来たが部屋に入れる、すなわちそれは、体も許すという意味に捉えられ兼ねないから、そんな軽い女だと思われる訳には絶対行かない。

何も変な事をする訳ではない、ただ部屋を見ればその人の大体の事が解るのだと、トム・クルーズが言い訳をしておるがそれを笑って信じる訳には行かない、何だそれは風水占いかと思うだけだ。


するとトム・クルーズは、では今週の水曜日に僕の部屋に来てください、それなら良いでしょうと言うから、それも出来ないと断る。

そういった諸々全ては婚約した後でなければならぬ、仲人とも約束したのである、婚活する上でのルールである。トム・クルーズは不満げに、僕達は付き合っているのですよねと言うがしかし、無駄な時間をかけずに結婚する為にはちゃんと段取りをする必要があるのだと私は経験上恐らくお主よりも知っている。今まで何度も失敗してきたのだと腹の中で思う。


トム・クルーズは、そうですかと言うと急に私の顔を強く両手で挟んだ。

そしてすぐに、長いまつ毛を伏せ、顔を傾けた彼の赤い唇が近付いてくる。

私は、なんという事か、咄嗟に、唇が触れる前に力を入れて彼を押しながら下を向く。

一呼吸置いて、私の顔にかかったトム・クルーズの両手から、徐々に力が抜けて行くのが分かった。

私は彼の男としてのプライドを踏みにじったのだ。