大手結婚相談所から申込まれた17歳年上の会計事務所経営者とのお見合い後の駅までの帰り道、会計士は自分が離婚した理由を話し出した。




先程のラウンジでは周りの騒めきで良く聞こえなかった声が並んで歩きながらだと明瞭に聞こえるから一安心である。



プロフィールではバツ2以上となっていた会計士の離婚理由を私からは質問しなかった


聞いたとしても本当の事なんか話す筈が無い、

胸に抱えた重石は自分で消化して次に生かすより他無いのだから相手にもその負担を背負わせるのは

心を許してるとかの問題なんかでは無い、

自分に酔った独り善がりだと思うのだが同調圧力はかけない主義だ。




彼はバツ2だと言った。



1人目の奥方は子どもを産んだ後に病で他界して、

2人目は結婚してすぐに病があったと分かったので別れたのだと言う。


私は、気の毒ではあるが1人目の話は本当で

2人目の話は大分慎重に考える必要があると思ったが

それを察したように会計士はなるべく明るい調子で言う、



- 2人目は若い女性でモデルみたくスタイルが良くて。


私は笑う。



- 出会ってすぐに、彼女が物凄く結婚したがるから真っ直ぐで、当時は仲間に、結婚するなら興信所に頼んで相手の調査を必ずしろと言われていたのにそれもせず結婚したら実は彼女は不治の病を抱えており、

とても面倒をみられない病なので離婚に至ったのだ。




私は笑いが凍りつく、

それは大変であったなと言うてはみるが結婚とは

病める時も健やかなる時もと言う訳にも行かないという事か。

抱えていた病とはアル中とか心の病とかであるのかとぼんやり考えるが深く聞くのは躊躇われる。恋の病では結婚に至るが離婚する病とは余程であろう。


そろそろ話題は変えるべきだと思うから、母上は元気であるかと尋ねると彼は、最近病で倒れてと言った後で、先程この話ししましたよねと私に言うから不意をつかれて青くなる、見合いの席では激しく頷いていた私であるから実は全般聞こえてなかったなどとは絶対に言えない。

病で倒れた母の話を2度も相手にさせるのは致命的だ、心の無い人間と思われても仕方あるまい。