私は自宅にて名刺を握り締めていたそれは、
以前参加した婚活パーティの帰りにエレベーターホールで渡された大手結婚相談所の名刺である。
昨日今日と続けて見た同年代女子のようにはなりたくないと改めて思ったのだ、相談所のマネージャーが
婚活パーティだとまた戻って来る人が多いのだと言っていた言葉が脳裏に浮かぶ。
昨日の昼、
社食の隣のテーブルで年増のお姉様が2人
這いつくばるように身を屈めてカレーを食べているのを目撃した
その様子まるでホラー映画のようである
化粧もしていないから肌の色がカレーと同化している。
その内の片方が、
課長はあなたに気があるのよと言いもう片方が
嫌だ止めてよと笑っているが共に目が本気。
2人打ち合わせたかのように太っており
こたつ布団のような服を着ていたからその課長が
ネコ科であれば皆で温まりたいと思うやも知れぬ。
そしてまた本日だ。
碑文谷ゴルフクラブで打ちっ放しの練習に行き
その帰りに最近雑誌に掲載された恵比寿の隠れ家的カフェに寄る事を決めた。
そのカフェの前に来て初めて気付く大通りに面していて隠れ家と名のつく店は大概チープで古い。
そして小さな店の扉を開けてから立ちすくんだ、
中にいる客が扉の開く音に反応したのか
一斉に顔を上げるその全員がほうれい線のキツい
おひとり様のお姉様方だ自分含めて何故ここに
ババアばかりがホイホイ集客されて来たのか、
私はそっと扉を閉めると行先を恵比寿麦酒記念館に変更して1人ビールを飲む事にする。
家に帰り一息つくと昨日今日で見た同年代と思しき
お姉様方が思い出される結局自分も他所から見たら
痛い40肩を抱えた独り身のお姉様だ
このまま気ままに一人で誰かの為に生きる事も無く
課長は気があるなどと妄想しながら歳をとり
勘違いしたまま隠れ家カフェで時間を潰す人生などは断じて御免だ。
私は燃えたぎる決意を胸に
名刺に書かれた相談所の連絡先に電話をかける。