42歳の誕生日その日に私は母と旅行に出掛けていた。



繰り返すが42歳の女が誕生日に独身でいて

夜はホテルで母親と一緒だ

そんなの全く良くない兆候であろう


親孝行だと言われたらそれまでだが

本来の親孝行とは少なくとも親に心配をかけない

人生を歩む事であろう。



その頃私は婚活パーティで知り合ったバツイチの出版会社の男と、会ったその日にディナーのワインで結婚の約束という杯を交し仁義を通していたものだから母にはその男と結婚すると報告していた。




男は中部地方出身である父親は某新聞社に勤務し兄は医者だと言うからDHCのサプリはもう飲めないなと私が言うと男は愉快そうに笑う。

我々が出会った翌日に男は温泉街にあるお婆の家に行く予定となっており

親族一同集まるから君もこのまま一緒に連れて行きたいがさすがに急すぎるので我慢するよ

と言われて何と素敵であろうかと思った。


男のお婆の家では卵でも野菜でも温泉を利用して目の前で調理してそれをつまみに皆で昼からワイワイ飲むのだと言うからその賑やかな情景が目に浮かぶようだ行ってみたい。



男は是非私と2人で海外旅行に行きたいと言うだがしかし英語は全く話せないので私に任せたと笑って言う

そして長年に渡る不摂生が影響して糖尿病を患っており食事については結婚したらよろしく頼むと言うから私は彼にとって必要な人間であるのだと特別な使命感を持つ。




その後男が田舎から戻り様々な食べ物をお土産として買ってきてくれたので私はそれを母との旅行に持参したのだが母は殆ど手を付けない。




旅先のホテルでのディナーも終わりデザートが出された頃、母が私に



その人との結婚は止めておいた方が良いのでは無いかと慎重に言った。



母には婚活話しを今まで逐一報告していたが反対するのはこれが初めてだ、そうやって反対するのを世間では毒親と言うのだと告げると母は、


結婚した後で相手が病気になり面倒を観るなら解るが最初から病気の人をお前が選ぶ必要は無いしかも男の田舎に行ってもお前は嫁の身であるから昼から酒は飲めないしその考えが既に甘いお前は本来料理を手伝う側であろう

そしてその男は何でもお前に頼む任せると丸投げであるように聞こえるが向上心のある人物なのかと淡々と問うから無言になる。