婚活パーティで出会った自営業の男と銀座のトリコロールから恵比寿に電車で移動する。




男は子どもみたいに終始ご機嫌であったから私が思い詰めた顔をしている事に気付かない。



恵比寿の改札を出ると男は

スカイウォークの壁に時々貼ってある転倒注意の転ぶ人のマークが気に入ったらしく

指差してあれ僕だと転ぶポーズを120回位真似ているが頼むから気付いてくれ笑えるのは最初の2回それだけだ。


スカイウォークを抜けた先はガーデンプレイスのイルミネーションが輝いているがもはやこれは自宅への帰宅ルートだから私はすっかり見慣れていて帰りが楽だから良いなと思うが自営業の男は興奮して携帯で写真を撮っている。

何でも事務員のおばさんに見せて自慢すると言うているが男の事務所から恵比寿まではせいぜい30分の道のりだからおばさんも興味があれば買い物帰りに来ているであろう。





ウェスティンホテルの中に入ると正面に大きなクリスマスツリーが飾ってある。

ガーデンプレイスの点灯式にはここでワインやシャンパンなどが皆にグラスでサービスされピアノが鳴りゴスペルが響くうっとりするような空間となる。



小さなリュックを背負った金髪の女の子が駆けて行くのをあれは天使かと見届けた後、中央にあるらせん階段を上り切ると龍天門に到着する。



私達は一番奥の部屋へと通されたそこのテーブル席に既に座るカップルはもはや全員プロポーズを受けたばかりに見えてくる。


しかし美味しい食事というのは会話が無くても素敵な会話をしたような錯覚に陥るのは何故であろうデートで味覚を満足させるだけで相手の男は8割増に良く見える。


私はタイミングを見計らうと締めのデザートの時に自営業の男に問うてみた、



以前私と結婚したいと言うてくれて嬉しかったがあれから月日は半年程経とうとしておる私も結婚したいと思うているが如何考えておられるかと。



すると男はデザートのスプーンをくわえたまま考えた後向き直るとこう言った


『僕から見ると君は少し子供っぽいかな』

ウフフと笑って誤魔化すからこれは良い返事では無いなと判断する。


私も奇遇であるが同意見だとは言えないから

そうであったかと返すと男は


『少し考えさせて下さい』


と言うから私はそれもそうかと頷いた。