婚活パーティで出会った自営業の男にライオンズクラブの集いに誘われた。
夏の花火大会とBBQが開催されるが仕事の仲間がみんな家族連れで参加するので良かったら一緒に行かないかと言われ喜んでお供致すと決意表明をする。
自営業の男が仲間の前で恥ずかしい思いをしないようにお洒落をしようと思い立ち、
前の年に三越で買った洒落た浴衣をアトレのメイクサロンに持ち込み長襦袢を中に着て足袋を履きまるで着物風に仕上げてもらう。
女も30過ぎた時から下駄にも足袋を履くのが御作法だ。髪は纏めて下から粋にかんざしを挿し唇には赤い紅を引く。
自営業の男は恵比寿まで最新型のクラウンで迎えに来ていつものように私に媚びる。
私は昔付き合った金持ちの男が乗っていたベンツと比べて国産車はこのエンジンの割に図体がデカ過ぎるだとか自分の手柄でも無い癖に過去の栄光との比較を内心では行っている。
助手席を開けて私を座らせると帯の下あたり背もたれと背中の間にタオルを挟むと寄り掛かられるので楽だと勧められるから着物について詳しいのかと問うと母が時々着物を着たのでエヘへと男が笑う。
会場までの道中は自営業の男の仕事で失敗した話し、民間人に訴えられて勝訴したのにまた訴訟を起こされているという話し、数年前に男の会社が民法テレビに取り上げられて電話が鳴り止まなかったが仕事を受けれるキャパを超え殆どの注文を逃したような話しを聞いた。
しかし仕事で失敗した話しなど本人は笑い話としたいようだが聞いているこちらは労働賃金を貰っている身であるせいか本音では笑えない。
しかし無理をして笑うから会場に着いた頃には体力よりも精神的疲労が凄い。
ライオンズクラブの仲間に紹介された私の印象は良好なようだ。初対面の人との接し方は婚活で慣れているが自営業の男よりも出しゃばらないように話し過ぎないように注意深く心掛ける。
自営業の男がもうすぐこの人と結婚するのだと嬉しそうに笑いながら仲間達に報告したら丁度夜空には花火が上がる。
皆でビールのグラスを打ち合わせると私はこの人とこの仲間達と生涯を共にするのだと覚悟を決める。