後輩から紹介された広告マンと彼の住んでいる駅付近のコーヒーショップを出る。


彼は、嫌いな食べ物や嫌いな店はあるかと私に訊ねた。変わった質問であるなと思い、

嫌いな食べ物は無いが煙の出ている店には行きたくないと答えると彼は、

そんな店は火事だから確かに嫌だねと笑った。



広告マンは少し歩くけどと断りを入れた上で自分が気に入っているというパスタ屋に私を案内した。


途中歩く道は普段彼がよく歩く道であろうからその景色が共有できる事が私はただ嬉しい。

道端の花も祝福してくれている。



パスタ屋の中は白く涼しく洗練されていた。

広告マンがお勧めする品に任せて昼から二人ビールグラスを傾ける。


相変わらず話は弾まないがここはカルボナーラが美味いのだと機嫌は良さそうである。私は気付けば彼から来るLINEにすっかりコントロールされており自然と顔色を伺うようになっている。


ランチを終えて店を出ると外は天気雨。

私が傘をさすと彼も一緒に入ってきて私の腰に当然のように手を廻す。案内されるまま道を歩くと途中小さな書店があり入って漫画の棚を眺めたりする。


雨は降ったり止んだりを繰り返しており長い時間を2人で話ながら歩いていたが唐突に広告マンは足を止め私の腰にまわした手に力を入れる。


体を回されて彼の端正な顔を正面に私は戸惑う、しかし何て魅力的な顔なのだろう。



彼は右手にあるマンションのエントランスを顎で差すと『ここが僕の家です、ちょっと寄ってお茶でもしませんか』と低い声で言った。