私の会社の後輩はまだ若く頭も良く、

くるくると動き回る小さなリスのような女性だ。

倹約家だが海外旅行が趣味でそこで出会った弁護士とチャッチャと付き合い気付いたらサッサと結婚していた。


そんな彼女は私に男性を紹介したいという。

最近イタリア語を習い始め、その教室で一緒の年上の男性が素敵だから是非とも二人を合わせたいのだと言う。


念の為に彼は独身なのか紹介に乗り気なのか

と問うと、

『はい。彼女もいないと言っていて会社の先輩を紹介したいと伝えたら二つ返事でしたし、何をしているかは知りませんが何となく収入も良さそうです』


鼻をツンと上向かせながら得意気に答える。


休日の夜の銀座で3人で会う為に店も予約をしたと言う。


彼女の手際の良さに感謝しつつ、当日私はアルマーニのワンピースと9センチヒールで銀座に向かう。

アンティプリマのブルーのスクエアバッグは小さめで、携帯も入れたらコスメはリップしか入らないが

恐らくメイクは直す必要も無いであろう。



エレベーターで5階にある約束の店は暗かった。



遠くの壁にダーツが赤く光り半世紀忘れられたジュークボックスが赤と緑の光線を眩く発している。銀色のテーブルに銀色の椅子

ここがアメリカなら後5分でターミネーターがやって来て辺り構わず銃撃戦を始めるであろう。


銀座にレストランは数あれどなぜこの店が今日の良き日に適所とこの後輩は考えたのか。



女二人で先に到着した為向かい合って座り旧未来的な雰囲気の中まだ来ぬ王子を待つ。




紹介の男性はやや遅れて到着したが、私が立ち上がり席を移動しようとするのを制して後輩の隣に座った。


初めましてと笑顔で挨拶した時は分からなかったが、落ち着いて話し始めるとその面影は

くっきりと人気俳優に似ておりさらに大手広告代理店の社員であるという。



それを聞き何処と無く色気のある雰囲気も感じて私はたちまち怖気付く。


何となく危ない匂いもするこれはヤリチン案件ではなかろうか。