お見合いパーティーで出会った銀行マンとは3週間に1回位のペースで会った。
大したことではないが思い出したので記載しておく。
ある休日の昼間に映画館に2人で行き、
隣接するハイアットのオークドアに入った時に一つのテーブルから視線を感じた。
気にせずに通り過ぎるが銀行マンがそのテーブルに座る人の椅子を誤って蹴った。
背がデカいから足もデカいのだ。
蹴られた人をよくよく見て私は息を飲む。
あれはお見合いパーティーで私がマッチングしなかったブサイクな小男ではないか。
私は偶然にもその日、
パーティに着ていた鮮やかなロイヤルブルーのワンピースという格好であったし、
同じパーティで目立っていた長身の男が一緒であるから小男も、
すわ、あれはあの時のあやつらだ
と気付いたのであろう、
一人の食事にしては多めの皿の数をテーブルに並べてワインなど飲んでいる様子であったが、
すっかり気配を消している。
しかし相変わらずの暗いオーラで、その羽根は、
一度の離婚に傷付き二度と飛べなくなっているようにも見えた。
私を選べば良かったのに幸せになれたのに。
そう思ってはっとする。
私が彼を幸せにできるという理由は何か。
一体私に特別な何があるというのか。
4回目のデートで私は銀行マンを家に泊めた。
私が作った料理を、
『初めて食する美味さだ』
とか言いながら残さず食べた。
だが私が彼の家に呼ばれる事は無い。
ある時インターコンチに宿泊した。
彼がチェックインをする間ソファーで待つように言われ承諾した。
彼はフロントに行ったきり中々戻って来ない。
長い長い時間を私はなすすべも無くただ独り待ち続けていた。