美容クリニックに通い、自分の外見に変化を感じるようになった38歳、私はお見合いパーティに参加するようになった。
パーティだから男女が集ってクラッカーを鳴らしガラスの靴を落とす、とか想像するが全く違う。
要は個人面談だ。
複数ある個室の中にまずは女性が一人ずつ入る。
そこに男性が座り、10分間話した後、男性だけ次の個室に移るような仕組み。
ディナーなんか出ない。出るのは水だけ。
その日男性は12人いた。
私は、話を終えた男が離席したら個室を出るまで立って見送るようにしていた為、一人ずつの印象をメモをする暇が無い。
何番がどんな様子であったかを記憶していない自分の薄い脳ミソをついつい恨む。
最後の一人は年収が恐ろしく良く、
3歳年下で、慶応大学を出ている事を自慢している背の高い銀行マンであった。
大学自慢する男は、
仕事が出来ないか酷い不満を持っているのではないか。仕事に満足していれば、大学ではなく仕事の話しをするであろう、それは私の気のせいか。
その銀行マンからはうっすらと遊び人の匂いがした。
『レーズンはせっかく美味しくブドウとして生まれてきたのに、シワシワにさせられて可哀想だ』
とか何とか言って私を笑わせた後、
自分のLINEIDを破いた紙に書き、
それを私の前に置いて個室を出て行った。
パーティで全員と話し終わった段階で、私は最もブサイクで年収の良い男一人だけを選び紙に書いた。
他の男を記入してマッチングしても、長続きしないような気がしたのだ。
私が選んだ男は小男で顔色も黒く暗い雰囲気を漂わせ、妻の浮気が原因で最近離婚したとか不幸満載であったから余裕でマッチングできると思った。
短時間だが心を通わせた。
だが結果はノーだ。
その小男は誰ともマッチングする事なく帰って行った。もちろん、この、思い上がった私もだ。
パーティが終わった後独りで帰る寂しい夜道。
会場を抜けた先のカフェ、スーパー、駅の改札、
どこにでもいる家族やカップルが一際目立って、何だかついため息をつく。
今独りでいる人生は、どこで選択を誤ったのか。
私はカフェの小さな椅子に身を潜めるようにしてコーヒーを飲んだ後、
紙を取り出し、背筋を伸ばすと、
本日出会った銀行マンにLINEを送った。