己が客観的に見られぬ程依存体質であった35歳の時、金持ちの男から離れた私は、自分でも引くほど不幸オーラ満載であった。


髪は痛み、頬は痩け、

どこをどう見たってクソババアである。


その年迎えたクリスマスはケーキも食べずに一人ベッドで寝たが翌朝、日付けが何事も無く変わっている事に単純に驚いた。


よもや、人間とは、一人でも生きていけるのか。



恵比寿に引っ越した後は、意を決して美容クリニックに通った。


最初は近所のクリニックで美容マシンの照射を受けたが、金額が高い上に初めてだから照射も弱い。
そこで大手を調べた。

小さなクリニックより最新型のマシンを使用しているが金額は安い。

安ければ照射を数多く受けられるし、徐々にパワーも強くできる。

さらにボトックスやヒアルロン酸、美容注射を受けて見た目に磨きをかけるようになった。



ヒアルロン酸はほうれい線に直接入れると見た目がゴリラになる。

入れるなら、頬の辺りに入れて皮膚を持ち上げる方が良いという情報も手に入れた。

情報というのは知っている分だけ強くなる。

真偽の判断とやるやらないは自分次第であろう。


35歳を過ぎて、
中でも特にオイリーになりがちな肌が悩みの種であった。
午後になるとベタつく自家製油を改善したくて、高価な基礎化粧品を購入してみるがさほど効果は感じられない。

そんな中で圧倒的な変化を感じたのは、

大手美容クリニックで勧められたロアキュタンという錠剤であった。
30錠で約3万円と高額だが、1錠飲むと肌が1日中サラサラでいられて、化粧崩れを気にする必要がない。
飲み続けると夏は頭皮がベタつかず、吹き出物も出なくなった。あんなに不快だった肌が変わる。
しばらく経ったあたりで錠剤をジェネリックに切り替えた。要はビタミンA誘導体だ。安くても効果は変わらない。

髪の毛もメンテナンスの必要があった。
ホットペッパービューティで調べて予約を取る。担当美容師に、髪は顔を縁取る大事な額縁です、と言われさもあらんと納得。

傷んで色が抜けたギスギスの長い髪が、パーマ液ひとつで、風が吹くとサラサラ揺れるストレートに変身をとげた。


現代の技術はお金さえ出せば、一瞬で願いを叶えてくれる魔法の杖だ。私はこの杖のお陰で荒んだ心に何度喜びを与えて貰った事であろう。

初めて効果を感じた瞬間の、あの平伏して神に感謝したくなる程の感動は、恐らく誰にも分かるまい。


今までは、人のお金から何かを分け与えてもらう喜びに執着していた。しかし、

自分の稼ぎで自分の為だけに使うお金と時間の何たる尊さ。


身体から忘れていたパワーが漲るようである。