私が30歳になってから付き合い始めた男であるが、常にハツラツとしていて、自信に満ち溢れ、贅沢が好きな割には、コカ・コーラが割引で買えると喜ぶような一面もあった。

今なら冷静に言える。
要は単なる田舎者だ。

お金が入ると自分を着飾るアクセサリーで解りやすく大きく他人に見せなければ、自分に自信が持て無い病気というだけなのだ。


当時、私はその男にどっぷりハマった。
高級レストラン、会員制のホテル、高級バッグや時計、指輪。
金色に光る砂を高い場所からサラサラと浴びせられるように、私はキラキラと特別な何かに変われるような錯覚に陥る。

そして会っていない時には繋がらない電話、メール。

マンションの外から外車の爆音が聞こえると、その男の車ではないかと、私は何度もベランダに飛び出す。

自分の心をコントロールする術も持たず、絡まりつくツタのように、マッチポンプのような感情もあらわに、私の全身全霊をその男に受け止めさせた。
そしてその愛はひたすら重かったであろう、男は4年も経つと他に女をつくった。


それは浮気なんかでは無い。


会えば、話せば、もう心が私から離れている事が分かる。
男の肩を揺さぶってどうしたら心が戻るのかと問い詰めたい衝動を堪え、ついに男には別れを告げず、私は泣き狂いそうな心を抑え込みながら単身恵比寿に引っ越した。


どこで間違えなければ?どうすれば正解だったのか?


金持ちの男から離れればそこには、甘やかされ傲慢になった35歳の女が一人残るだけだった。