なるべく沢山の人とお見合いするようにと、入会時に大手結婚相談所の仲人から言われていた。
私の担当となった仲人は私より相当若い女性であるが、顔中にシミがあった。そして結婚したばかりとの事。
結婚に至るまでの作業を円滑に進める為に、私の恋愛経験をヒアリングしたいと、入会手続き後に提案された。
私はほんの一瞬躊躇する。
全て話す事に抵抗は無いが、話す事によるリスクは無いのか。
例えば、これから出会う未来の旦那がイケメンで金持ちで(ヲイ)、私の身元調査を行う為の彼に札束でビンタされたこの仲人が『実はこの女の人生は』と、魔女みたいな顔で話すような事にはならないのか。
私が35歳で別れた男は、悪い男だった。
世間一般のいわゆる悪い男ではなく、その時ついに警察に捕まったのだから、本当に悪い男であった。
その男は当時、会社をいくつか持っていた。身につける時計もカバンも有名ブランドで固め、最新型のベンツやフェラーリ、ポルシェを何台も乗り回していた。
海外にも何度か一緒に行き、私が知らない世界を軽々とステップを踏むように見せてくれた。