パリッシュ+エッセイ「今村翔吾 湖上の空」

パリッシュ+エッセイ「今村翔吾 湖上の空」

滋賀の情報誌パリッシュ+に連載中の歴史小説家今村翔吾さんの日常にあった出来事や歴史のお話などを綴ったエッセイ

 よくテレビなどを見ていると、芸人さんたちが同期、先輩、後輩などと言っているのを耳にする。芸人さんならば育成する学校に所属した時期であったり、初めて舞台を踏んだ日であったりで決まっているのか。故に年下でも先輩、年上でも後輩などということが起こりうるのだろう。

 

 作家の場合も明確に基準がある訳ではないが、デビューの時期というのが一つの目安になるのだろう。しかしこのデビュー時期というのが曖昧である。長新人賞を受賞したタイミングが多いように思うが、新人賞を経ずに出版する人もいる。その新人賞も地方の文学賞なのか、一般的に中央と言われる大手出版社の新人賞を指すのか。

 

まあ、作家とは個人で完結する仕事であるため、そもそも芸能人ほど交流がある訳でもなく、それほど気にしなくていいのも事実である。が、やはり「先輩作家だから……」などと耳にすることもあるため、少しは皆気にしているのかもしれない。

 

 話は戻るが、作家のほうが年齢の幅は顕著である。十代でデビューして何十年も第一線でやっている作家もいれば、六十歳を超えてデビューする新人もいる。前者は芸能人でいうと子役からという役者さんもいるためまだあり得るが、私が無学なだけかもしれないが、後者のほうはほとんど聞かない。

 

 私の場合は2017年3月デビューということにしている。2016年には二つの賞を受賞したが、両方とも地方の文学賞だったこともあり、デビュー作が出版された日にしているのだ。同じ定義でいうと2017年デビューで面識のあるのは今村昌弘先生。たまたま姓が同じということもあり企画で対談させて貰った。映画にもなった『屍人荘の殺人』が有名である。

 

 他には鈴木るりか先生。何と2003年生まれの14歳デビューである。初めはどんなもんやいう気持ちも僅かにありつつ本を手に取ったが、「いや、これ14歳て言われんかったら分からんな」と、舌を巻いた。末恐ろしい。

 

 14歳の同期もいれば、思いっきり年上の後輩もいる。今年私の出身賞の一つである『角川春樹小説賞』でデビューしたのは、渋谷雅一という60歳の方である。還暦を迎えて新人デビューしたことになる。コロナの影響もあり、まだお目に掛かってはいないが、どう接していいのか戸惑うかもしれない。

 

 ここまで色々と語ってきたが、つまりは小説というジャンルは非常に間口が広い。鈴木先生ほどでなくとも、高校生でデビューなんて話は別段珍しくない。五十代のデビューなんてざらにある。小説を書いてみたいが、若すぎる、あるいはもう歳だなどと思っている人がもしいれば、一度書いてみることをおすすめする。

 

20年経ってもデビューしない人もいれば、初めて書いた小説でデビューする人がいるのもまた事実。結局、書いて応募してみるまで、自分自身にも小説の才能というのは解らないものだ。まず、書いてみる。それに尽きる。

 

【profile】

今村翔吾/いまむらしょうご ■『八本目の槍』(新潮社)・第8回 野村胡堂文学賞 受賞・第41回吉川英治文学新人賞 受賞 ■『童の神』(角川春樹事務所)・第160回 直木三十五賞候補 ■『じんかん』(講談社)・第163回 直木三十五賞候補 ・第11回 山田風太郎賞 受賞 ■『童の神』コミック化!!「月刊アクション」(5/25発売)よりスタート ■『カンギバンカ』「週刊少年マガジン」50号から新連載開始!(直木賞候補にも選ばれた超本格歴史小説『じんかん』(著/今村翔吾)を原作が、その名を変えて新たな物語として描かれる!) ■フジテレビ系「とくダネ!」コメンテーター ■TBSテレビ系「Nスタ」コメンテーター