パリッシュ+エッセイ「今村翔吾 湖上の空」

パリッシュ+エッセイ「今村翔吾 湖上の空」

滋賀の情報誌パリッシュ+に連載中の歴史小説家今村翔吾さんの日常にあった出来事や歴史のお話などを綴ったエッセイ

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  二年以上に亘って連載させて頂いた『湖上の空』ですが、今回が最後となります。現在、月刊誌を五つ、週刊誌を一つ、新聞での毎日連載が一つ、合わせて書下ろしのシリーズが二つ……さらに来年から新聞で月一の書評エッセーが始まることで、取り敢えず一区切りさせて頂きたい旨を申し出ました。仕事が増えることは非常にありがたいことですが、正直なところ、私が思っていた以上の多忙な日々を過ごしております。

 

 そもそもこの誌面でエッセーを連載させて頂いたのは、京都府に生まれながら、滋賀県に住まわせて頂いている私が、少しでも滋賀県の皆様に恩返しが出来たらという想いのためです。その想いというのは、今なお変わりませんし、今後も滋賀県を盛り上げていくためならば、微力ながら頑張っていきたいと思っています。

 

 この最終回が皆さまのお手元に届く頃には、もう発表されているとは思います。この度、第166回直木賞の候補に、拙作『塞王の楯』が選ばれました。この作品は滋賀県が誇る石積みの職人集団「穴太衆」が主人公で、またライバルとして同じく滋賀県の鉄砲作りの職人「国友衆」が登場します。そしてその両者がぶつかるのもまた滋賀県にあった大津城。滋賀県尽くしの小説となっております。

 

 三年連続三度目といえば聞こえは良いですが、すなわち先の二回は受賞に至らなかったということ。この作品で受賞出来れば、それこそ滋賀県に恩返し出来るのでは……と、淡い期待を抱いております。

 

 ただし実力は勿論のこと、こればかりは時の運もあります。幾ら最高の出来でも、それ以上の候補作があれば受賞するには至りません。ただ仮に此度の受賞を逃したとしても、私は諦めることはありません。

 

 2009年に前々職のダンス講師として住まい、2015年に退職して守山市埋蔵文化財センターでお世話になり、2017年に小説家として一歩を踏み出したのもこの地です。勝手にですが、すでに京都の作家ではなく、滋賀の作家だと私自身は思っています。そしてこれからも滋賀に住まいつつ、必ずや夢に達するつもりです。

 

 滋賀には作家がいる。少しでも作家という仕事を身近に感じて頂けたならば、このエッセーにも意味があったかと。是非、何処かでお見かけの際は、お気軽にお声を掛けて下さい。そうでなくとも、また何処かで、文章を通してでも再会出来たならば、これ以上の幸せはありません。長い間、誠にありがとうございました。