ガリなゲイも意外とイケル
「すげえ、早い」「半端な時間だからかな」起きあがろうとするぼくのこめかみにキスし、今度はちゃんとシャツを羽織って、佐伯さんは出ていった。 思いきり手足を伸ばしてみる。 べ″ドは三回寝返りを打ってもまだ余るくらいだった。 数年まえ家族で香港へ行ったとき、ホテル側の手違いで部屋がとれていなくて逆に最上階のスイートに泊まれたことかあったのだが、あの部屋のべ″ドと同じくらいかもしれない。 姉ちゃんがはしゃいじゃってなんどもタイプしてたっけ。 思いだした瞬間、あさこ、と佐伯さんの声がした。 耳を疑うひまもなく、姉がドアのところに立っていた。 ぼくは飛び起きた。 姉は硬直していた。 どんな顔をしているともいえない、あえて描写するなら無表情90だった。 その背後の佐伯さんも無表情だった。 たぶんぼく自身もだったろう。 「何してるの」自動音声の調子で、姉は云った。 佐伯さんが腕をとろうとすると振り払った。 紙片が床に落ちるのが見えた。 電力会社の領収書だった。 それでぼくは理解した。 前にこの家に来たとき、ポストに入っていたのを佐伯さんはポケ″トにしまっていた。 姉はそれを発見し、知らない住所に疑いを抱いてここまでたしかめにやってきたのだ。 でもどうして?そんな気配ぜんぜんなかった。 今朝だってのんびり平和な顔で、ひまだから誘いに来たとか云っていたのに。
「すげえ、早い」「半端な時間だからかな」起きあがろうとするぼくのこめかみにキスし、今度はちゃんとシャツを羽織って、佐伯さんは出ていった。 思いきり手足を伸ばしてみる。 べ″ドは三回寝返りを打ってもまだ余るくらいだった。 数年まえ家族で香港へ行ったとき、ホテル側の手違いで部屋がとれていなくて逆に最上階のスイートに泊まれたことかあったのだが、あの部屋のべ″ドと同じくらいかもしれない。 姉ちゃんがはしゃいじゃってなんどもタイプしてたっけ。 思いだした瞬間、あさこ、と佐伯さんの声がした。 耳を疑うひまもなく、姉がドアのところに立っていた。 ぼくは飛び起きた。 姉は硬直していた。 どんな顔をしているともいえない、あえて描写するなら無表情90だった。 その背後の佐伯さんも無表情だった。 たぶんぼく自身もだったろう。 「何してるの」自動音声の調子で、姉は云った。 佐伯さんが腕をとろうとすると振り払った。 紙片が床に落ちるのが見えた。 電力会社の領収書だった。 それでぼくは理解した。 前にこの家に来たとき、ポストに入っていたのを佐伯さんはポケ″トにしまっていた。 姉はそれを発見し、知らない住所に疑いを抱いてここまでたしかめにやってきたのだ。 でもどうして?そんな気配ぜんぜんなかった。 今朝だってのんびり平和な顔で、ひまだから誘いに来たとか云っていたのに。